判旨
判決に適用法令の表示を遺脱するなどの違法があっても、認定事実からすれば結論に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、刑訴法411条による破棄事由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決において没収の根拠となる法令の適条を遺脱する違法がある場合に、刑訴法411条に基づき職権で原判決を破棄すべきか。
規範
判決に理由齟齬や適用法令の遺脱といった訴訟法上の違法がある場合であっても、それが判決に影響を及ぼすことが明らかでない限り、上告審が職権で判決を破棄すべき(刑訴法411条)事由には該当しない。
重要事実
被告人が政府の免許を受けずに焼酎五合を製造した事案において、原判決は事実を認定し没収を言い渡しながら、その適条として改正前の酒税法16条、64条1項1号を示すにとどまり、直接の没収根拠規定である同法14条、60条1項等の適条を遺脱していた。
あてはめ
原判決には適条の遺脱という違法が認められる。しかし、原判決が認定した事実によれば、当該焼酎は無免許で製造されたものであり、酒税法の規定に照らせば当然に没収を免れないものである。そうであれば、原判決が適条を遺脱したことは形式的な不備にすぎず、没収の結論自体が正当であることは極めて明らかである。したがって、著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
原判決に法令適用の遺脱という違法があっても、判決の結果に影響を及ぼさないことが明らかであるため、上告棄却を免れない。
実務上の射程
判決書における法令適用の表示(刑訴法335条1項)の不備が、直ちに破棄事由となるわけではないことを示す。実務上、結論の妥当性に影響しない形式的誤謬については、刑訴法411条のハードルを超えないとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4530 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審で主張も判断もされていない事項を新たに上告理由とすることは不適法であり、事実誤認や量刑不当の主張は適法な上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:被告人が焼酎の密造未遂罪で処罰された事案において、弁護人が上告を提起した。弁護人は、(1)原審で主張・判断されていない事項、(2)事実誤認および訴訟…