判旨
刑事訴訟法291条の手続終了後、証拠調べに入る前に裁判官が被告人に対して公訴事実について質問することは、直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
冒頭手続終了後、証拠調べの開始前に裁判官が被告人に対して公訴事実に関する質問を行うことは、刑事訴訟法上許容されるか。また、それが憲法37条に違反するか。
規範
刑事訴訟法291条(冒頭手続)に定められた手続が完了した後、証拠調べを開始する前の段階において、裁判官が被告人に対し、公訴事実について直接質問を行うことは、必ずしも違法とはいえない。
重要事実
被告人側は、第一審において証拠調べに入る前に裁判官が被告人に対して公訴事実に関する質問を行ったことを違法と主張した。また、原審において控訴趣意としての主張がなかった点や、弁護人への通知状況についても争点となった。弁護人は、このような手続が憲法37条(被告人の権利)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
判例(昭和25年12月10日大法廷判決)の趣旨に照らせば、刑事訴訟法291条による手続(起訴状朗読、権利告知、罪状認否等)が終了した段階で、証拠調べに入る前に裁判官が質問を行うことは、訴訟手続上の裁量の範囲内であり違法ではない。したがって、本件において裁判官が質問を行ったとしても、憲法37条の保障する諸権利を侵害するものとはいえず、訴訟法違反の主張は採用できない。また、記録上、弁護人に対する通知も適正になされており、手続的瑕疵は認められない。
結論
裁判官が証拠調べ前に公訴事実について質問することは違法ではなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官による被告人質問のタイミングに関する限界を示したもの。実務上、被告人の自白や言い分の早期確認としての意味を持つが、黙秘権の侵害にならないよう配慮が必要。答案上は、冒頭手続の直後における裁判官の介入の適法性を肯定する際の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1177 / 裁判年月日: 昭和27年6月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠調べ手続の開始前に被告人に対して犯罪事実に関する質問を行うことは、黙秘権を侵害するような不当な圧迫にわたらない等の合理的な範囲内であれば、直ちに違法とはならない。 第1 事案の概要:第一審裁判所において、証拠調べ手続に入る前の段階で、裁判官が被告人に対し、起訴状に記載された犯罪事実につ…
事件番号: 昭和26(あ)1686 / 裁判年月日: 昭和27年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法291条の冒頭手続終了後、証拠調べを開始する前に裁判官が被告人に対して公訴事実について質問を行うことは、適法な訴訟手続である。 第1 事案の概要:被告人Bの弁護人は、刑事訴訟法291条による冒頭手続(人定質問、起訴状朗読、権利告知、被告人・弁護人の陳述)が終了した直後、証拠調べに入る前の…