判旨
刑事訴訟法301条の趣意に鑑み、検察官が自白調書を他の証拠と同時に取調請求した場合であっても、実際の取調順序が他の証拠の後であれば、同条に違反しない。
問題の所在(論点)
検察官が、被告人の自白を内容とする書面(自白調書)を、他の証拠と同時に取調請求し、一括して証拠採用の決定を受けた場合、実際の取調順序が他の証拠の後であったとしても、刑事訴訟法301条に違反するか。
規範
刑事訴訟法301条は、被告人の自白を内容とする書面の取調べについて、他の証拠が取り調べられた後でなければならない旨を定めている。これは、自白による予断を排除し、証拠裁判主義を徹底する趣旨である。したがって、取調請求が同時になされたとしても、実際の証拠調べの順序が法に定められた順序に従っている限り、同条の趣意に反するものではない。
重要事実
検察官は、公判において司法警察員作成の現行犯人逮捕手続書等の証拠(1〜5)と同時に、被告人の自白を含む供述調書等(6〜8)の取調請求を行った。被告人及び弁護人はこれに異議なく同意し、裁判所の採用決定に基づき、検察官は請求の順序に従ってこれらを順次朗読した。その結果、自白調書(6〜8)は、他の証拠(1〜5)の取り調べが終わった後に取り調べられた。
あてはめ
本件において、検察官が自白調書(6〜8)を他の証拠(1〜5)と同時に請求した事実は認められる。しかし、公判調書の記載によれば、実際の証拠調べの手続きは、他の証拠(1〜5)の取調べが先行して完了しており、その後に自白調書の朗読が行われている。このように、現実の取調順序が法301条の定める「他の証拠が取り調べられた後」という要件を満たしている以上、予断排除という法の目的は達せられており、手続上何ら違法な点はないといえる。
結論
自白調書の取調べが他の証拠の後に行われた本件の手続きは、刑事訴訟法301条の趣意に反せず、適法である。
実務上の射程
証拠調べの「順序」に関する基本判例である。答案上は、301条違反の有無を検討する際、単に「請求の同時性」のみで判断するのではなく、「実際の取調べの前後関係」を重要事実として認定する際に活用する。本判決の論理によれば、請求が同時であっても取調順序が守られていれば適法となるが、予断排除の徹底という観点からは、運用上慎重な区別が求められる点に留意すべきである。
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事件番号: 昭和26(あ)1680 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
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