判旨
憲法32条および36条違反を主張しても、その実質が単なる刑事訴訟法違反や量刑不当にすぎない場合は、刑法訴訟法405条の上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
憲法違反を名目として掲げつつ、その実態が法律違反や量刑不当である場合に、刑事訴訟法405条の上告理由として適法か。
規範
最高裁判所に対する上告理由は刑事訴訟法405条に限定されており、憲法違反を主張する場合であっても、その実質が単なる法律違反や不当な量刑の主張にとどまるものは、適法な上告理由とは認められない。
重要事実
被告人が、裁判を受ける権利(憲法32条)の侵害および残虐な刑罰の禁止(憲法36条)への抵触を理由に上告を申し立てた事案。しかし、その主張の実質的な内容は、刑事訴訟法の手続規定への違反や、言い渡された刑の重さに対する不服(量刑不当)であった。
あてはめ
被告人の主張する憲法32条違反は、実質的には単なる刑事訴訟法違反の主張に帰し、また憲法36条違反の主張も、実質は量刑不当を訴えるものである。これらは憲法の理念そのものを争うものではなく、法律適用の当否や裁量の範囲を問題にするものといえる。したがって、刑訴法405条が定める憲法違反という上告理由には実質的に該当しない。
結論
本件上告は適法な理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
憲法違反を主張して上告する際、形式的に憲法の条数を挙げるだけでなく、実質的に憲法解釈上の誤りや憲法適合性を問う内容が必要であることを示している。司法試験上は、上告理由の制限(刑訴法405条)に関する基本論証として、実質が法律違反・量刑不当・事実誤認にすぎない場合の処理を説明する際に参照される。
事件番号: 昭和28(あ)4306 / 裁判年月日: 昭和30年8月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】違憲を主張する上告趣意であっても、その実質が単なる法令違反や量刑不当の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。上告趣意の第一点および第二点は違憲を主張するものであったが、その実質は法令違反の主張であり…