判旨
教化説法の方便として行われた暴行であっても、正当な動機や証拠が認められない限り、暴行罪としての違法性は阻却されない。
問題の所在(論点)
教化説法などの宗教的目的に基づく暴行が、刑法35条の正当業務行為として違法性を阻却するか、あるいは慈愛的行為として処罰の対象外となるか。
規範
宗教的儀式や教化活動の一環として行われた行為であっても、それが一方的な暴力の行使であり、かつ具体的な事情に照らして正当な激励や慈愛的行為と認められない場合には、刑法上の違法性を阻却する正当な業務(刑法35条)とは認められない。
重要事実
被告人は、当時15歳であった被害者(A)に対し、何らかの事由により2回にわたって殴打した。弁護側は、本件行為が被害者への激励の際の過失行為、あるいは教化説法の方便としての慈愛的行為であると主張した。しかし、第一審は本件を「些細なことから殴打した」ものと認定した。
あてはめ
被告人は些細なことから被害者を2回殴打しており、その態様は一方的な暴行といえる。弁護人が主張する「激励」や「慈愛的行為」といった動機を裏付ける証拠は存在せず、教化説法に付随する正当な手段としての範囲を逸脱している。したがって、本件暴行は社会通念上許容される範囲を超えた違法な暴力の行使であると解される。
結論
被告人の行為は暴行罪を構成し、違法性は阻却されない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
宗教活動に伴う身体侵害について、その目的が善意(教化)であっても、手段の相当性や動機の客観的な裏付けを厳格に求める。答案では「正当な業務(35条)」の成否を論じる際、手段の必要性・相当性の検討材料として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)6714 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
刑法第二〇八条にいわゆる暴行とは、人の身体に対し不法な攻撃を加えることをいい、加害者が、室内において相手方の身辺で大太鼓、鉦等を連打し、同人等をして頭脳の感覚が鈍り意識もうろうたる気分を与え、または、脳貧血を起させたりする程度に達せしめたる場合をも包含するものと解すべきである。
事件番号: 昭和46(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和50年12月25日 / 結論: 破棄自判
大学の移転統合計画等に反対する学生が、(一)大学本部二階に新設された遮断扉につき多数学生の面前で説明することを事務局長に要求して拒否されると、同人を階下に連れ降ろそうとし、数人共同して、同人の腰かけている椅子次いでテーブルを倒し、その都度同人を床上にずり落とし、更に同人がベアリング付椅子に腰かけているのを椅子ごと二回に…
事件番号: 昭和27(あ)4473 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合等の活動が刑法上の正当行為(刑法35条)として違法性を阻却されるためには、その行為が憲法28条の趣旨に照らし、正当な団体交渉の目的達成のために必要かつ相当な範囲内で行われることが必要である。 第1 事案の概要:被告人らの所為が刑法上の犯罪構成要件に該当する一方で、被告人側は当該行為が憲法2…