判旨
偽証教唆罪の成立には、正犯者が教唆に基づいて虚偽の証言をした事実があれば足り、正犯者が当該偽証罪で起訴されていることは要しない。
問題の所在(論点)
偽証教唆罪が成立するために、正犯である証人が偽証罪で起訴されていることが必要か。共犯(教唆犯)の成立における正犯の訴追・処罰の要否が問題となる。
規範
教唆罪(刑法61条1項)が成立するためには、正犯が実行の着手に至ることを要するが、正犯の処罰や訴追は教唆犯の成立要件ではない。したがって、客観的に正犯の構成要件該当性及び違法性が認められる事実が証拠により証明されれば、正犯者の起訴・処罰の有無にかかわらず、教唆犯は成立する。
重要事実
被告人は、証人A及びBに対し、公判廷において事実とは異なる内容の証言をするよう教唆した。A及びBは被告人の教唆に基づき、第一審公判廷において虚偽の証言を行い、偽証の事実が認められた。しかし、これら正犯者である証人らは偽証罪で起訴されていなかったため、弁護人は正犯が起訴されていない以上、被告人の偽証教唆罪も成立しないと主張して上告した。
あてはめ
裁判所は、第一審判決が掲げる諸証拠(証人らの供述等)を検討した結果、A及びBが被告人の教唆に基づき、ことさらに内容虚偽の証言をした事実を認定した。正犯者が偽証罪で起訴されているかどうかは、被告人の罪責(教唆犯の成否)とは無関係である。第一審は、検察官の認定を無批判に受け入れたのではなく、自ら証人尋問を行い、独立して犯罪事実を認定しているため、手続的にも正当である。
結論
偽証をした正犯者が偽証罪で起訴されているか否かは、偽証教唆罪の成否に影響しない。被告人に偽証教唆罪の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
共犯の処罰における従属性の程度(制限従属性説)を確認する際、正犯の「訴追」まで必要ないことを明示する素材となる。実務上は、正犯が公訴棄却や不起訴、あるいは死亡等で処罰できない場合でも、教唆犯を独自に立証・処罰できる根拠として引用できる。
事件番号: 昭和30(あ)3218 / 裁判年月日: 昭和35年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が自己の被告事件に関し他人に虚偽の陳述をするよう教唆した場合でも偽証教唆罪が成立し、また、偽証の実行犯による「被告人から依頼された」旨の供述は、被告人の自白そのものではないため、補強証拠なくして被告人を有罪とする根拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人は、自らが被告人となっている刑事事件に…