判旨
不当な逮捕・勾留が行われた場合であっても、公訴提起の効力は妨げられず、また当該拘禁中に作成された供述調書についても、直ちに証拠能力が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
先行する逮捕・勾留に不法な手続き上の違法がある場合、それに基づく公訴提起の有効性や、拘禁中に得られた供述調書の証拠能力にどのような影響を及ぼすか。
規範
不法な逮捕・勾留等の手続きの違法については別途の手続(準抗告や国賠請求等)で救済されるべきであり、公訴提起自体の効力には影響しない。また、不法な逮捕・拘禁中に作成された供述調書であっても、その一事をもって直ちに証拠能力を無効とすべきではない。
重要事実
被告人が検察官に対して自白を行った際、その前提となる逮捕・勾留が不法なものであったこと、および当該自白が拷問等により強制されたものであることが主張され、上告理由とされた事案である。原判決および第一審判決では、自白以外に補強証拠が存在し、事実認定に誤りはないと判断されていた。
あてはめ
最高裁は、仮に当初の逮捕勾留が不法であったとしても、公訴提起が無効になることはないとの判例を引用した。また、証拠能力についても、不法拘禁中の作成という事実のみから直ちに無効とは解さず、自白の任意性に疑義を生じさせる強制拷問等の客観的事実も記録上認められないことから、証拠排除は認められないと判断した。
結論
不法な逮捕・拘禁があっても直ちに公訴無効や証拠排除には繋がらず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則(最高裁昭和53年9月7日判決等)が確立される以前の古い判例であり、現代の答案作成においては、本判決の「直ちに無効としない」とする文言を維持しつつも、先行手続の違法の程度が「重大」であり、将来の違法捜査抑制の観点から「相当でない」場合には排除されるという現代的規範への橋渡しとして理解すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)3343 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い抑留又は勾禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、事実の内容や手続の経過等を総合的に勘案して判断されるべきである。また、自白以外の証拠により犯罪事実を認定し得る場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が司法警察官に対して行った…