判旨
食糧管理法違反の犯罪成立後に統制が廃止されても、それは事実上の変更に過ぎず、刑法上の「刑の廃止」には当たらない。また、労役場留置により家族の生活が困窮する場合であっても、生存権を規定する憲法25条には違反しない。
問題の所在(論点)
1. 食糧管理法に基づく統制の廃止が、刑訴法337条2号の「刑の廃止」に該当するか。2. 労役場留置による家族の困窮が憲法25条違反となるか。
規範
1. 犯罪後の法令の改廃により刑が廃止された場合に当たるといえるためには、当該法令の変更が、その行為を処罰すること自体が不当であるという反省的考慮に基づくものであることを要する。事実上の事情の変化に伴う統制の廃止は「刑の廃止」には該当しない。2. 労役場留置等の刑の執行に伴う事実上の生活困窮は、憲法25条の違反を構成しない。
重要事実
被告人は食糧管理法に違反する売渡行為等を行った。その後、政令等により一部の食糧に関する統制が廃止されたため、被告人はこれが「刑の廃止」(刑訴法337条2号、刑法6条)に当たり免訴されるべきであると主張した。また、罰金刑の換刑処分として労役場に留置されると、その扶養家族が路頭に迷うことになり憲法25条に違反するとも主張した。なお、上告審の審理中に大赦令(昭和27年政令117号)が公布された。
あてはめ
1. 食糧管理法違反の成立後、一部の食糧の統制が廃止されたとしても、それは食糧事情の変化という事実上の変更に対応した措置に過ぎない。したがって、以前の行為の処罰を否定する反省的考慮に基づくものではなく、「刑の廃止」があったとはいえない。2. 刑の執行の結果として生じる家族の生活苦は、刑罰が本来内包する事実上の不利益であり、生存権を保障する憲法25条の趣旨を逸脱するものではない。
結論
被告人の主張はいずれも採用できない。ただし、職権により一部の犯罪については大赦による免訴を認め、残余の罪について有罪を維持する。
実務上の射程
「法律の変更」と「事実の変更」の区別に関する重要判例。食糧管理法や旧外為法のような経済統制法規が、事態の変化に伴い緩和・廃止された場合、原則としてそれは事実の変更に過ぎず、過去の違反行為の可罰性は維持されるという構成(限時法論の変形)を答案で用いる際に参照する。
事件番号: 昭和26(あ)3804 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪成立後に法令の改正等により対象物が規制から除外されたとしても、それが事実上の変更にすぎない場合は、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が主要食糧輸送罪に該当する行為を行った。しかし、犯罪成立後、当該行為の対象となっていた物品が主要食糧の指定…