判旨
高等裁判所の判例が最高裁判所の判例により既に変更されている場合、当該高等裁判所の判例と相反することを理由とする上告事由は認められない。
問題の所在(論点)
刑訴法405条等の上告理由において、原判決が「高等裁判所の判例」と相反すると主張された場合、その判例が既に最高裁判所の判例によって否定されているときでも、なお上告理由として成立するか。
規範
上告趣意において指摘された高等裁判所の判例が、既に最高裁判所の判例によって変更され、原判決の判断が当該最高裁判所の判例に適合する正当なものと認められる場合には、刑訴法上の上告理由(判例相反)には当たらない。
重要事実
弁護人が、原判決には高等裁判所の判例と相反する判断があるとして上告を申し立てた事案である。しかし、当該上告趣意で挙げられた高等裁判所の判例は、本件以前の最高裁判所第三小法廷判決(昭和28年5月12日判決等)によって既に実質的に変更されていた。
あてはめ
本件において弁護人が主張する高等裁判所の判例は、既に最高裁判所の確定した判例によって変更されている。そのため、原判決が当該高等裁判所の判例に従わなかったとしても、それは最高裁判所の示した法解釈に合致する正当な判断といえる。したがって、変更済みの判例との相反を主張することは、上告理由としての実質を欠く。
結論
本件上告は理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
判例相反を上告趣旨とする際、参照する高裁判例が最高裁によって既に否定されていないかを確認する実務上の留意点を示す。また、最高裁判例が存在する場合には、高裁判例ではなく最高裁判例との相反(刑訴法405条2号)を検討すべきことを示唆する。
事件番号: 昭和50(あ)168 / 裁判年月日: 昭和50年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例違反をいう上告理由は、原判断にそわない事実関係を前提とするものである場合や、単なる事実誤認・法令違反・量刑不当の主張にすぎない場合には、刑訴法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立て、弁護人が上告趣意書において判例違反等を主張した事案。しかし、その判例違反の主…