原判決及び第一審判決はいずれも本件拳銃に所論のような折損のあつたことを認定していないのである。従つて右判決において為された本件拳銃の修理が可能であるかどうかの判断は所論のような折損があつたとしての仮定に立脚するものであるからその判断は蛇足の説明であつて、たとえ最高裁判所の判例に反するものとしてもこれをもつて上告の理由とすることはできない。
判例と相反する判断をしたことにあたらない一事例―仮定的判断が判例と相反すると主張するとき―
刑訴法405条
判旨
拳銃の不法所持罪において、通常の修理により本来の性能を回復し得る状態であれば同罪が成立し、所持を開始した場所は犯罪地として認められる。
問題の所在(論点)
1. 破損した拳銃が、銃砲等所持禁止規定の対象となる「拳銃」に該当するか否かの判断基準。 2. 所持罪において、所持を開始した場所が「犯罪の場所」といえるか。
規範
拳銃所持罪における対象物は、当時の社会状況(設備・資材等)に照らし、通常の修理によってその性能を回復し得るものであれば「拳銃」に該当する。また、所持罪における「犯罪の場所」には、当該物件の所持を開始した場所も含まれる。
重要事実
被告人Cは、共犯者Aの居宅において本件拳銃を買い受け、その所有権を取得して所持を開始した。当該拳銃には折損箇所があったものの、5、6日の日数と約3000円の費用をかければ修理可能な状態であった。被告人側は、当時の物資不足等の社会情勢下では修理不能であり、拳銃には当たらないこと、および第一審が認定した場所が犯罪地として不当であることを主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)603 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
拳銃が弾倉を欠いていても、なお銃器たる形態を存し、且つ修理によつて直ちに本来の性能を回復し得るものである以上、銃砲等所持禁止令第一条第一項の「銃砲」にあたる。
あてはめ
1. 本件拳銃の折損については、5、6日の期間と3000円程度の費用で修理可能と認められる。当時の設備や資材が不足していた一般社会情勢を考慮しても、この程度の修繕は「通常の修理」の範囲内であり、依然として拳銃としての実質を失っていないと評価される。 2. 被告人CはA方で拳銃を譲り受け、その時点で所持を開始している。継続犯である所持罪において、その行為の始期にあたる場所は、当該犯罪事実を構成する重要な場所であるといえる。
結論
本件拳銃は依然として所持罪の対象に当たり、所持を開始した場所を犯罪地と認定した原判決に誤りはない。
実務上の射程
物件の毀損がある場合でも、容易に復元可能であれば規制対象性を維持することを認めた。答案上は、禁制品の該当性判断において「通常の修理による性能回復の可能性」という基準を用いる際の根拠となる。また、管轄や訴因の特定において、所持罪の犯罪地として所持開始場所を挙げる際の論拠としても有用である。
事件番号: 昭和26(れ)1695 / 裁判年月日: 昭和26年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反の罪が成立するためには、所持された拳銃等が一時的に使用し得ない状態であっても、修繕すれば使用可能になり得るものであれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が所持していた拳銃について、弁護人は使用不能なものである旨を主張したが、原審(第一審・控訴審)はこれを「通常の拳銃」であると認…
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…