他人から預つた物を他に届けた以上、その間預つた物を事実上「自分の支配し得べき状態」に置いたものであることはいうまでもない。
他人から預つた物を届けた行為と不法所持罪の成立
昭和24年政令389号2条
判旨
禁制品等の「所持」とは、目的・動機の如何を問わず、対象物を自己の支配し得べき状態に置く現実の所持一般を包含する。他人から預かった物を目的地に届けるまでの間、事実上支配下に置いた場合もこれに該当する。
問題の所在(論点)
他人から預かった物を目的地に届けるまでの間、一時的に事実上の支配下に置く行為が、法令(本件では昭和22年政令第165号)にいう「所持」に該当するか。
規範
特定の物の「所持」を禁止する規定における「所持」とは、処分権能を有する所持のみならず、その目的・動機の如何を問わず、凡ゆる現実の所持一般を包含するものと解される。すなわち、対象物を事実上「自分の支配し得べき状態」に置いている限り、その態様を問わず所持に該当する。
重要事実
被告人両名は、他人からある物(本件では昭和22年政令第165号に規定される物)を預かり、それを他の場所へ届ける行為を行った。弁護人は、このような一時的な保管や運搬は「所持」にあたらないと主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6400 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
被告人は旅館の支配人であつて、本件軍票は右旅館に対する支払いを被告人が同旅館の機関(支配人)として受領したものであつても、被告人が所持したことに変りはなく、被告人はその刑責を免れるものではない。
あてはめ
被告人らは、他人から預かった物を他に届けたものであるが、その運搬・伝達の過程において、当該物件を事実上「自分の支配し得べき状態」に置いていたことは明らかである。所持の成立には、処分権能の有無や所持に至った目的・動機は影響しないため、目的地へ届けるという目的であっても、現実の支配がある以上、所持にあたると評価される。
結論
他人から預かった物を届けるために事実上の支配下に置く行為は「所持」に該当する。
実務上の射程
銃砲刀剣類所持等取締法や薬物五法における「所持」の概念を検討する際の基礎となる判例である。主観的な目的(預かり物であること等)を問わず、客観的な支配状態があれば「所持」を肯定する広範な解釈を示しており、運搬者や保管者の罪責を画定する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)458 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和24年政令第389号(貴金属の管理に関する政令)違反と贓物罪(現行法の盗品等関与罪)が同時に成立する場合、それらは一所為数法の関係(観念的競合)にあり、大赦の適用判断においても一体として扱われる。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令第389号(貴金属の管理に関する政令)に違反する行為を…
事件番号: 昭和30(あ)2219 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、占領目的の達成のみならず国内経済秩序の維持という公共の福祉をも目的とするため、平和条約発効後も当然に失効せず、その効力を維持させた法律も事後立法には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和24年政令389号(連合国占領軍財産等収受所持禁止令)に違反する行為…
事件番号: 昭和29(あ)1654 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
有罪判決において、適用法令として銃砲刀剣類等所持取締令を示すには、同令と共に昭和二七年法律第一三号をも示す必要はない。
事件番号: 昭和24(れ)1926 / 裁判年月日: 昭和25年1月12日 / 結論: 棄却
所持はある物を自己の事實上の支配内に置くことであつて、その支配が他人のためにすると自己のためにするとを問うものではない。そして原判決の判示とその證據とを對照すれば、原判決の認定した事實は、被告人がAから依頼を受けて連合國占領軍の財産であることを知りながら、判示袋二個を同人より受取りこれを自己の自轉車に積み、判示キヤンプ…