判旨
深夜の取調べによってなされた供述であるという一事をもって、直ちにその任意性を否定することはできない。検挙当時の状況や取調べの態様に照らし、被告人の意思を圧迫して強制された形跡がない限り、当該供述の証拠能力は認められる。
問題の所在(論点)
深夜に行われた取調べに基づく供述が、刑事訴訟法319条1項にいう「任意にされたものでない疑いのある自白」に該当し、証拠能力を欠くことになるか。
規範
自白の任意性(刑事訴訟法319条1項)の判断にあたっては、取調べの時間帯のみならず、検挙当時の諸事情、被告人の供述態度、取調べ官の証言等を総合的に考慮すべきである。深夜の取調べであっても、その必要性が認められ、かつ、被告人の意思を圧迫して強制したと認められる特段の事情がない限り、供述の任意性は否定されない。
重要事実
被告人らは、深夜に司法警察員による取調べを受け、その際になされた自白等の供述について、深夜の取調べであることを理由に任意性が欠如していると主張して争った。事案の背景として、検挙当夜に早急な取調べを要する状況が存在していたほか、取調べ担当者の証言や公判廷における被告人の供述などの事情が存在していた。
あてはめ
本件では、深夜の取調べが行われているものの、検挙当時の事情に照らせば一応早急な取調べを要する状況があったと認められる。また、取調べにおいて被告人らの意思を圧迫して強制的に供述させたという形跡は認められない。加えて、取調べ担当者の証言や原審公判廷での被告人の供述内容を精査しても、任意性を疑うに足りる事情は見当たらない。したがって、深夜の取調べであるという一事をもって任意性を否定することはできない。
結論
深夜の取調べによる供述であっても、意思を圧迫するような強制的態様が認められない以上、任意性は否定されず証拠能力を有する。
事件番号: 昭和26(あ)952 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白がある場合、相被告人の供述を当該被告人の自白に対する補強証拠とすることができる。これは憲法38条3項の趣旨に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する刑事事件において、原判決が相被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し弁護…
実務上の射程
取調べの不当な長期化や深夜・徹夜の取調べが任意性を否定する有力な事情となることは否定されないが、本判決は「深夜であること」のみで直ちに違法・証拠排除とはならないことを示している。実務上は、取調べの必要性(緊急性)や具体的な取調べの態様とセットで論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和27(あ)3578 / 裁判年月日: 昭和28年11月30日 / 結論: 棄却
捜索差押調書は捜索差押許可状と共に提出しなければ証拠能力を欠くということはない。
事件番号: 昭和26(あ)3372 / 裁判年月日: 昭和27年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人が証拠調請求に対して異議なく同意し、かつ強制による供述であると疑うに足りる資料がない場合、供述調書の証拠能力は認められ、憲法38条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、司法警察員および検察事務官が作成した供述調書の証拠調請求に対し、異議なくこれに同意したことが第…
事件番号: 昭和26(あ)88 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
記録によると、被告人Aは昭和二四年九月二〇日恐喝未遂事件(原判決判示第一の(一)の事実)の嫌疑により勾留状の執行を受け、名古屋拘置所代用監獄起町警察署に勾留されたのであるが、本件が複雑で関係者多数のため取調困難という理由で同年一〇月九日まで勾留期間が延期され、その期間終了の前日である同月八日右恐喝未遂事件で起訴せられた…
事件番号: 昭和26(れ)450 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述が犯罪事実を認めるものでない場合、それは「自白」には当たらない。また、自白以外の証拠も併せて事実認定に用いられているのであれば、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原審は第一審…