判旨
被告人に多額の罰金を科すことによりその家族が生活困難に陥るとしても、当該判決が憲法25条に違反することはない。
問題の所在(論点)
多額の罰金を科す判決が、その家族の生活を困難にする場合、憲法25条(生存権)に違反するか。
規範
憲法25条は、国家に対し健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を課しているが、刑罰(罰金刑)の執行に伴う事実上の生活困窮は、同条が禁じる人権侵害には当たらない。
重要事実
被告人に対し多額の罰金刑が科された。これに対し、被告人側は、当該罰金額の支払いが被告人の家族に多大な経済的負担を強いることになり、結果として家族が生活困難に陥るため、憲法25条が保障する生存権を侵害し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判旨は、先行する大法廷判決(昭和23年4月7日)を引用し、罰金刑の賦課が家族の生活困難を招くとしても、それが直ちに憲法25条違反を構成するものではないと判断した。罰金は被告人本人に対する制裁であり、その付随的・事実的影響として家族の生活水準が低下したとしても、国家による生存権の直接的侵害には該当しないと解される。
結論
被告人に多額の罰金を科す判決は、その家族が生活困難に陥るとしても憲法25条に違反しない。
実務上の射程
刑事罰の合憲性判断において、刑罰の執行に伴う経済的不利益が家族等に及ぶといった事実上の影響は、憲法25条の違反を根拠づける事情にはならないことを示した。生存権を根拠とした刑罰の減免主張を排斥する際の論拠として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)3993 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条は、最低限度の生活を営み得ないことを理由に犯罪行為を正当化する根拠とはならず、生存権の保障をもって直ちに違法性が阻却されることはない。 第1 事案の概要:被告人は何らかの犯罪行為(判決文からは罪名等の詳細は不明)に及んだが、その背景には最低限度の生活を営むことができないという経済的困窮が…