判旨
上告理由として判例違反を主張する際には、具体的な判例を特定して示す必要があり、これを行わない主張は不適法である。
問題の所在(論点)
上告趣意において「判例違反」を主張する際、具体的な判例の特定を欠くことが適法な上告理由(刑事訴訟法405条)として認められるか。
規範
刑事訴訟法405条に基づく上告理由として判例違反を主張する場合には、違反の対象となるべき最高裁判所の判例を具体的に明示しなければならない。
重要事実
上告人は、原判決の判断が最高裁判所の判例に違反すると主張して上告を申し立てた。しかし、上告趣意書において、違反したとされる具体的な判例を特定して示さなかった。
あてはめ
上告人は原判決が当裁判所の判例に違反すると主張するが、その判例を具体的に示していない。刑事訴訟法405条所定の上告理由を構成するためには、具体的な判例との抵触を明らかにすることが不可欠であるところ、本件ではその具備がない。したがって、適法な上告理由の提示があったとは認められない。なお、本案の判断においても、所論が参照し得るべき過去の判例(昭和26年(あ)3115号等)に照らして、主張を採用できないことは明白である。
結論
判例を具体的に示さない判例違反の主張は不適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事実務における上告趣意書の作成上、判例違反を理由とする場合は事件番号や裁判年月日等による判例の特定が必須であることを示す。特定の欠如は形式的不備として不適法とされるリスクがあるため、答案上も上告受理の要件論として意識すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)1615 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書において具体的な不服の内容を示さず、単に過去に提出した控訴趣意書を引用するのみの記載は、適法な上告趣意の主張とはいえない。 第1 事案の概要:弁護人が提出した上告趣意書において、記録に添付されている昭和25年9月30日付の控訴趣意書を引用する旨のみが記載されていた。また、別途「控訴趣意書…