判旨
裁判所が犯人の性格、境遇、情状等を審査して量刑を行うことは、特別予防及び一般予防の観点から個別に妥当な処置を講ずるものであり、憲法14条の法の下の平等に違反しない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所による個別の量刑判断において、他の犯人と比較して重い処罰がなされることが、憲法14条の法の下の平等の原則に違反するか。
規範
憲法14条の「法の下の平等」は、合理的理由のない差別を禁止するものである。刑事罰の量定においては、特別予防及び一般予防の要請に基づき、各犯罪・各犯人ごとに妥当な処置を講ずる必要がある。したがって、事実審裁判所が犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の情状及び犯後の情況等を総合的に審査し、個別の事情に応じて異なる刑を量定することは、正当な理由に基づく合理的な差異であり、同条に違反するものではない。
重要事実
被告人は食糧管理法違反の罪で起訴された。被告人には同法違反の前科があり、その罰金を完納しないうちに再犯に及び、さらに保釈中に本件犯行を重ねていた。原審は、被告人に同情すべき諸般の情状があることも考慮した上で、上記のような再犯の経緯等を重視し、被告人に対して懲役4月の実刑を言い渡した。これに対し弁護人は、社会的身分につき不利益な点のみを強調し、利益に考慮されるべき身分を無視した量刑は憲法14条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は被告人に同情すべき事情を完全に無視したわけではなく、記録に現れた諸般の情状を照らした上で判断している。その上で、被告人が前科の罰金未納中に再犯し、さらに保釈中に本件犯行に及んだという犯罪後の状況や犯情の悪さを重視している。これは、個別の犯人に対する「特別予防」及び社会一般への「一般予防」の観点から適切な刑罰を量定するための合理的な考慮である。したがって、他の類似した犯情の者より重く処罰されることがあっても、それは事案に即した妥当な処置といえる。
結論
事実審による個別の量刑判断は、合理的な裁量に基づくものであり、憲法14条に違反しない。
実務上の射程
量刑不当を憲法違反の問題(平等原則違反)にすり替えて主張する上告趣意に対し、量刑の個別化の合理性を根拠にこれを退ける際のスタンダードとなる。答案上は、量刑判断の妥当性が平等原則との関係で争われる場面での論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1923 / 裁判年月日: 昭和27年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の過去の経歴や性行を把握する資料として、本件犯罪と罪質の異なる前科を量刑上斟酌することは、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人には本件犯罪とは罪質を異にする窃盗その他の前科があった。原判決はこれらを含む「主観的事情」を量刑上考慮したが、弁護人はこれを「前科者」である…
事件番号: 昭和25(あ)2325 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】多数の同種犯罪者が起訴・処罰されていない状況で、特定の被告人のみが起訴されたとしても、それが個別の犯情等に基づく妥当な措置である限り、憲法14条の平等原則に違反しない。また、食糧管理法による規制は国民の生活安定を目的とするものであり、憲法25条の生存権を否定するものではない。 第1 事案の概要:被…