食糧管理法九条一項にいう「譲渡其ノ他ノ処分」の中には、譲受や買受をも含むものであつて、同法施行令六条一項の規定が同法九条一項の委任の範囲を逸脱したものでないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和三〇年(あ)二九七七号、同三二年一二月一七日第三小法廷判決参照)
食糧管理法第九条第一項にいう「譲渡其ノ他ノ処分」の意義
食糧管理法9条,食糧管理法施行令6条
判旨
食糧管理法違反の事案において、特定の違反者が処罰される一方で、他の多数の違反者が検挙・起訴されないとしても、そのことのみをもって憲法14条1項の法の下の平等に違反するものではない。
問題の所在(論点)
特定の刑事違反者が起訴・処罰される一方で、他の多数の同種違反者が検挙・起訴されていない場合(いわゆる不平等起訴・選択的追訴の問題)、それが憲法14条1項の平等権に違反するか。
規範
憲法14条1項が保障する法の下の平等は、犯情の類似した被告人間の処罰に差異があることを直ちに禁ずるものではない。この趣旨は、他に多数の違反者が存在するにもかかわらず、それらが検挙されず、あるいは起訴されなかったために、特定の者のみが処罰されるという結果が生じる場合であっても同様に妥当する。
重要事実
被告人A、B、Cらは、当時の食糧管理法に違反する行為(譲受・買受等)により起訴された。これに対し、被告人側は、世間には他にも同様の違反者が多数存在しているにもかかわらず、それらが検挙・処罰されていない状況で、被告人らのみを処罰することは憲法14条の平等原則に反する不平等な取り扱いであると主張して上告した。
あてはめ
刑事手続における起訴・処罰の差異について検討する。本件において被告人らは、他の多数の違反者が処罰を免れていることを主張するが、判例の趣旨に照らせば、犯情が類似する者の間で処罰に差異が生じること、あるいは他に未検挙・未起訴の違反者が存在すること自体は、直ちに憲法14条違反を構成するものではない。検察官による公訴提起の裁量権(起訴便宜主義)の行使が、特定の意図をもって差別的に行われた等の特段の事情がない限り、他の違反者が処罰されていない事実は原判決を違憲とする理由にはならない。
結論
他の違反者が検挙処罰されていないとしても、被告人らに対する処罰が憲法14条に違反するものとはいえない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「起訴便宜主義」と憲法上の「平等原則」の関係を示す射程の長い判例。答案上は、不平等起訴(選択的追訴)の適法性が争われる場面で、検察官の裁量権行使が憲法に違反するかを判断する際の出発点(原則として合憲)として引用すべきものである。ただし、本判決は差別的意図がある場合の例外には触れていない点に留意する。
事件番号: 昭和26(あ)287 / 裁判年月日: 昭和27年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が犯人の性格、境遇、情状等を審査して量刑を行うことは、特別予防及び一般予防の観点から個別に妥当な処置を講ずるものであり、憲法14条の法の下の平等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反の罪で起訴された。被告人には同法違反の前科があり、その罰金を完納しないうちに再犯に及び、さら…
事件番号: 昭和25(あ)2325 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】多数の同種犯罪者が起訴・処罰されていない状況で、特定の被告人のみが起訴されたとしても、それが個別の犯情等に基づく妥当な措置である限り、憲法14条の平等原則に違反しない。また、食糧管理法による規制は国民の生活安定を目的とするものであり、憲法25条の生存権を否定するものではない。 第1 事案の概要:被…