食糧管理法施行令六条は、政府以外の者は所定の除外事由がある場合のほか、何人も米穀の生産者からその生産した米穀を買い受けてはならない旨規定しているのであつて、買い受ける者が消費者であるか、その他の者であるかによつてなんら差別せず、何人でも右規定に違反すれば食糧管理法九条一項三一条によつて処罰されるのである。されば、消費者とその他の者との処遇につき不平等であるとの所論は、本件には全く当らない。
食糧管理法施行令第六条の法意
食糧管理法施行令6条,食糧管理法9条,食糧管理法31条
判旨
食糧管理法が米穀の生産者からの買い受けを一律に禁止・処罰している点は、消費者であるか否かによって差別を設けていないため、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
食糧管理法および同法施行令が、米穀の生産者からの買い受け行為を一律に禁止し処罰の対象としていることが、消費者とその他の者を不当に差別するものとして憲法14条に違反するか。
規範
憲法14条1項の法の下の平等に反するか否かは、法規範が特定の対象を不合理に差別しているか否かによって判断される。法令の規定が、特定の属性(消費者であるか否か等)にかかわらず一律に適用され、何人に対しても等しく禁止および罰則を課している場合には、不合理な差別の問題は生じない。
重要事実
被告人は、農業者からその生産した粳玄米を4回にわたって買い受けた。食糧管理法(当時)および同法施行令6条は、政府以外の者は、所定の除外事由がある場合を除き、何人も生産者から米穀を買い受けてはならないと規定し、これに違反した者は処罰される。弁護人は、消費者の買い受け行為が事実上黙過されている一方で生産者や販売者が処罰されるのは憲法14条違反であると主張して上告した。
あてはめ
食糧管理法施行令6条は、米穀の買い受け禁止の対象を「何人」とも規定しており、買い受ける者が消費者であるか、その他の販売業者等であるかによって何ら区別を設けていない。したがって、法規範自体が消費者とそれ以外の者との処遇につき不平等な差別を設けている事実は認められない。被告人が主張する「消費者の買い受けが黙過されている」という事情は、本件の法令の文言および適用関係においては、法の下の平等の問題を生じさせるものではない。
結論
本件各規定は憲法14条に違反しない。したがって、被告人に対する食糧管理法違反の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
法令が形式上「何人も」として一律に禁止を課している場合、その適用対象の属性による差別の主張は認められにくいことを示した。事実上の取り締まりの差異(運用の不平等)があったとしても、法令自体の合憲性を争う理由としては不十分であるという実務的判断の枠組みを示唆している。
事件番号: 昭和27(あ)512 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制下において、米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送を行うことが適法となる場合があるとしても、法定の除外事由がない限り、当該規制に違反する行為は違法性を阻却しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、当時の食糧管理法等の規制に違反して米の加工・輸送に関わる行為…