判旨
控訴審において主張されず、原判決が判断を示していない事項について、上告審で新たに憲法違反を主張することは適法な上告理由に当たらない。また、一審判決が被告人の自白のみに基づいて有罪を宣告した事実は認められない。
問題の所在(論点)
1. 控訴審で主張しなかった憲法違反の事由を、上告審で新たに主張できるか。2. 被告人の自白のみをもって有罪とした事実があるか(自白の補強法則違反の存否)。
規範
上告審は事後審としての性質を有することから、控訴趣意において主張されず、かつ原判決が判断を示していない事項を新たに上告理由とすることは、刑事訴訟法上認められない。また、自白の補強証拠の存否については、記録を精査し、自白のみで有罪とされていないかを確認すべきである。
重要事実
被告人の弁護人は、第一審判決に対し量刑不当のみを理由として控訴したが、控訴審(原判決)はこれを棄却した。弁護人は、上告審において新たに憲法違反を主張し、また、第一審判決が被告本人の自白のみで有罪を認定した旨を主張して上告を申し立てた。
あてはめ
弁護人の上告趣意第一点は、控訴審で全く主張されず、原判決の判断を経ていない事項に関する憲法違反の主張であるため、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。第二点については、記録を精査したところ、第一審判決は被告人の自白のみならず、他の証拠を併せて有罪を認定しており、刑事訴訟法411条を適用して破棄すべき顕著な正義に反する事由は認められない。
結論
本件上告を棄却する。上告審で新たに主張された事項は適法な上告理由にならず、自白のみによる有罪認定の事実も認められない。
実務上の射程
上告審における「憲法違反」の主張が適法とされるためには、原則として控訴審において当該問題が争点化されている必要があることを示す。実務上、上告趣意の適法性を検討する際の基礎的な判断枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和25(あ)2498 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が単なる刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎない場合は、同法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人は、上告趣意において憲法違反を主張したが、その具体的内容は刑訴法411条に該当する事由を…