判旨
判決書の事実認定において、証拠と照らし合わせて明白な誤記がある場合、上告審はこれを誤記として認めた上で原判決を維持することができる。
問題の所在(論点)
判決書に事実認定の数値の誤りがある場合、それが直ちに判決に影響を及ぼす違法(刑事訴訟法上の上告理由)となるか、あるいは単なる誤記として許容されるか。
規範
判決書における事実認定の数値等の記載が、挙示された証拠の内容と照らして明らかに矛盾し、かつそれが単なる書き損じであることが明白な場合には、これを「誤記」として扱い、判決の結論に影響を及ぼす違法とはしない。
重要事実
第一審判決が判示事項の第四において、事案に関連する水の分量を「水約五合」と記載した。しかし、判決が引用している各証拠の内容を比較・照合すると、実際には「水約五升」であるべき事案であった。被告人側は証拠説明の不備等を理由に上告した。
あてはめ
本件において、判決文中の「水約五合」という記載は、挙示された各証拠を比照すれば「水約五升」の誤記であると認められる。このような明らかな誤記は、判決の基礎となる事実認定の実質を損なうものではなく、証拠説明の不備や法令違反には当たらないと解される。
結論
本件の記載ミスは単なる誤記として認められるため、上告を棄却し、原判決を維持する。
実務上の射程
司法試験の答案上、判決文に軽微な数値の誤りがある場合でも、それが証拠関係から見て明白な誤記であれば、事実誤認や理由不備の違法にはならないとする論理の補強に使える。実務上の更正決定等の背景にある考え方を示すものといえる。
事件番号: 昭和28(あ)5605 / 裁判年月日: 昭和30年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状の記載に照らして、判決における犯行態様の判示が米、麹及び水を原料として濁酒又は清酒を製造したという趣旨であることが明らかであれば、判決に法令違反の瑕疵はない。 第1 事案の概要:被告人が濁酒または清酒を製造したとして酒税法違反等で起訴された事案。第一審判決の記載において、製造の具体的態様に関…