判旨
囮捜査による犯行であっても、それが直ちに刑罰を阻却する事由や公訴棄却の判決をなすべき事由に当たるとは限らず、適法な上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
捜査機関による「囮捜査」が行われた場合、それが刑罰阻却事由(無罪)や公訴棄却事由(打ち切り)となり、適法な上告理由を構成するか。
規範
囮捜査が行われた場合であっても、それが刑法上の刑罰阻却事由(違法性阻却事由や責任阻却事由)を構成するか、あるいは刑事訴訟法上の公訴棄却事由に該当するかについては、個別具体的な状況に基づき判断されるべきであり、当然に無罪や公訴棄却をもたらすものではない。
重要事実
被告人が犯行に及んだ際、捜査機関による囮捜査の手法が用いられていた。被告人側は、本件が囮捜査による犯行であることを理由に、刑罰阻却事由が存在し、無罪または公訴棄却の判決がなされるべきであると主張して上告した。なお、原審(控訴審)ではこの点についての判断は示されていなかった。
あてはめ
最高裁判所は、弁護人が主張する「囮捜査による犯行であるから刑罰阻却の原由がある」との主張に対し、刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由に当たらないと判示した。また、原審が判断していない事項であることに加え、記録を精査しても刑事訴訟法411条(職権による判決取消)を適用して救済すべき顕著な正義に反する事態とは認められないとした。
結論
本件における囮捜査の主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、また職権で破棄すべき事由にも当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、囮捜査の適法性や効果について明示的な基準(犯意誘発型か機会提供型か等)を示したものではなく、上告理由としての適格性を否定したに留まる。司法試験答案においては、囮捜査の違法性を論じる際の出発点(かつての消極的態度を示す例)として参照されるが、実務上の具体的な判断枠組みについては後の判例(最決平成16年7月12日等)を優先すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)5648 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
取調請求のあつた証人のある者につき、許否の決定を留保したまま公判が続行されたが、証拠調を終えようとするにあたり、裁判官が反証の取調の請求その他の方法により証拠の証明力を争うことができる旨を告げたのに対し、請求当事者が「他に取調を請求する証拠はない」と述べたときは、右証人の取調請求は放棄されたものと解すべきである。