判旨
いわゆる囮捜査が行われたとしても、それによって犯意を誘発された者の犯罪の成否および訴訟手続の適法性に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
捜査機関が囮を用いて犯意を誘発した場合に、当該捜査が犯罪の成否や公訴提起等の訴訟手続の効力に影響を及ぼすか。
規範
囮捜査によって犯意を誘発された場合であっても、被告人の犯罪の成否(実体法上の責任)および訴訟手続(適法性)には影響しない。
重要事実
被告人が、捜査機関またはその依頼を受けた者による働きかけ(囮捜査)に応じて犯罪を実行した事案において、弁護人は当該捜査の違憲性を主張して上告した。
あてはめ
判旨は、過去の判例(昭和28年決定等)を引用し、囮捜査が犯意誘発型であったとしても、犯罪の成立自体が否定されることはなく、また訴訟手続上の瑕疵として無効になることもないとの判断を維持した。本件における具体的な誘発態様や必要性の有無については、判決文からは不明であるが、一律に訴訟手続等への影響を否定する立場を採っている。
結論
本件上告を棄却する。囮捜査は犯罪の成否および訴訟手続に影響しないため、違憲の主張は前提において理由がない。
実務上の射程
本判決は囮捜査の適法性について極めて限定的な判断に留まっているが、後の最高裁平成16年7月12日決定等は、囮捜査が許容される要件(直接侵害の不在や必要性等)を示している。答案上、本判決は「旧来の厳格な実体・手続分離論」の立場を示すものとして参照し、現在は平成16年決定の規範(捜査の相当性)に基づいて論じるのが一般的である。
事件番号: 昭和27(あ)5727 / 裁判年月日: 昭和29年11月5日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる囮捜査は、これによつて犯意を誘発された者の犯罪構成要件該当性、責任性若しくは違法性を阻却するものではない。