判旨
食糧管理法による経済統制は、憲法25条の生存権規定に違反せず、同法の規定に基づき処罰することは憲法上許容される。
問題の所在(論点)
食糧管理法に基づく経済統制およびそれによる処罰が、憲法25条が保障する生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)に違反するか否か。
規範
憲法25条が規定する生存権は、国に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障するための施策を求める権利であるが、具体的な経済施策や統制の在り方は立法府の裁量に委ねられている。したがって、公共の福祉の観点からなされる食糧管理法等の経済統制は、直ちに同条に違反するものではない。
重要事実
被告人は、食糧管理法および同法施行令に基づき禁止されていた米の買受け行為等を行った。これに対し、第一審および原審は、食糧管理法違反および物価統制令違反の罪を認定し、併合罪として処断した。弁護人は、食糧管理法による統制は憲法25条が保障する生存権を侵害するものであり違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は大法廷判例(昭和23年9月29日判決)を引用し、食糧管理法の合憲性を肯定した。同法による食糧の配分統制は、国民全体の生活を保障するために必要不可欠な公共の福祉に基づく制限である。本件被告人による無許可の米の買受け行為は、かかる適法な統制秩序を乱すものであるため、生存権の保障を盾に免責されるものではない。なお、物価統制令違反については、訴訟の過程で政令による赦免があったため、免訴の対象となる。
結論
食糧管理法は憲法25条に違反しないため、同法違反の罪による処罰は合憲である。被告人を懲役9月(執行猶予3年)及び罰金3万円に処する(物価統制令違反部分は免訴)。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)1641 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法による食糧の統制は、国民全体の生存権を保障するための公共の福祉に基づく合理的な制限であり、憲法25条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、当時の食糧管理法による制限に反して食糧の取引等を行ったとして起訴された事案。被告人側は、同法による食糧統制が国民の生存権を侵害し、憲法25条に違…
生存権(25条)のプログラム規定的な性質を示唆し、立法府の広範な裁量を認める文脈で活用できる。経済的自由の制限のみならず、生存権を根拠とする経済統制の是非が争われる場面において、合憲判断の基礎となるリーディングケースとしての射程を持つ。
事件番号: 昭和26(あ)2325 / 裁判年月日: 昭和28年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑罰の科せられた結果として被告人がいわゆる最低生活を営むことができなくなったとしても、その判決が憲法25条に違反することはない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらが刑事事件において有罪の判決を受けた。これに対し被告人Aは、刑罰を科せられることによって「いわゆる最低生活を営むことができなくなる」…