一 仮りに捜索差押許可状に差し押えるべき物の特定を欠く違法があつたとしてもその一事によつて、所論差押調書そのものが無効となるものとはいえないし、また右調書を証拠に供することについては、被告人並びに弁護人が同意しているのみならず、原判決判示第一の事実は、右調書の記載を除外した他の証拠によつてもこれを認定し得るのであるから、原判決の訴訟手続には憲法三三条に反するような違法はない。 二 原審裁判所の書記が第一審裁判所の審理に立ち会つたことは、裁判所法及び刑訴法の規定に照らし何等の違法なく、従つて所論憲法三七条違反の主張は前提を欠くものである。
一 捜索差押許可状の違法は差押調書の証拠能力に影響するか 二 同一書記官が第一、二審の審理に立ち会つたことと憲法第三七条
憲法33条,憲法37条1項,刑訴法99条,刑訴法102条,刑訴法106条,刑訴法282条,刑訴法26条,刑訴法20条
判旨
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成を持つ裁判所を指す。また、捜索差押許可状に瑕疵があっても、それだけで直ちに差押調書が無効となるわけではなく、同意がある場合や他の証拠で事実認定が可能な場合は違憲・違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 裁判官の構成や書記の関与が憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判に反するか。 2. 捜索差押許可状に違法がある場合、その結果作成された差押調書の証拠能力が否定されるか。
規範
1. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもった裁判所を意味し、個々の事件の内容・実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものではない。 2. 捜索差押許可状の手続に違法があったとしても、その一事のみをもって直ちに差押調書等の証拠能力が無効となるものではない。
重要事実
被告人は、原審裁判所の構成に家庭裁判所の判事が加わったこと、および第1審の審理に立ち会った書記が原審に関与したことが、憲法37条1項の「公平な裁判所」に反すると主張した。また、捜索差押許可状に違法があったとして、当該手続に基づく差押調書を証拠とした原判決の訴訟手続の違憲・違法を主張し、上告した。なお、被告人および弁護人は、当該調書を証拠とすることに同意していた。
あてはめ
1. 本件における原審裁判所の裁判官構成および書記の関与は、裁判所法および刑事訴訟法の規定に照らして適法であり、組織・構成として偏頗や不公平のおそれがあるとはいえない。 2. 捜索差押許可状に仮に主張のような違法があったとしても、それにより当然に差押調書が無効とはならない。本件では、被告人らが証拠供用に同意している上、当該調書を除外した他の証拠によっても犯罪事実が認定可能である。したがって、手続に違法は認められない。
結論
本件裁判所の構成および訴訟手続に違憲・違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公平な裁判所の意義および違法収集証拠の証拠能力に関する初期の判断を示す。特に違法収集証拠については、同意の存在や他証拠による補完を理由に証拠能力を認めており、後の令状主義の精神に反する重大な違法を基準とする判例法理(最判昭53.9.7等)の前段階の判断として位置づけられる。
事件番号: 昭和26(れ)888 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所の組織構成において偏頗の恐れがないことを意味し、個々の事件における判決内容の実質的な妥当性を指すものではない。したがって、量刑の不当を理由に「公平な裁判」でないと主張することはできない。 第1 事案の概要:被告人は、婚姻して家庭を持ち、真面…