判旨
憲法38条2項にいう不当に長い拘禁後の自白に該当するか否かは捜査の経緯に照らして判断されるべきであり、また憲法37条2項は裁判所に被告人が申請した全証人の取調べ義務を課すものではない。
問題の所在(論点)
1. 勾留後22日目までになされた自白が、憲法38条2項にいう「不当に長い拘禁」後の自白として証拠能力を否定されるか。 2. 裁判所が被告人の申請した証人を取り調べないことは、憲法37条2項に違反するか。
規範
1. 憲法38条2項の「不当に長い拘禁」後の自白に該当するか否かは、具体的な捜査の経緯に照らして個別具体的に判断されるべきである。 2. 憲法37条2項は、裁判所に対し被告人が申請した証人のすべてを取り調べる義務を課すものではなく、裁判所が必要と認めて尋問を許可した証人に限られる。
重要事実
被告人Dは、勾留当日から22日目までの間に検察官等に対して自白を行った。弁護人は、これが憲法38条2項の「不当に長い拘禁」後の自白にあたり証拠能力がないと主張した。また、第一審において被告人が申請した証人が取り調べられなかったことが、憲法37条2項(証人喚問権)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件における捜査の経緯に照らせば、勾留当日から22日目までの間に得られた自白は、不当に長い拘禁後のものとはいえない。さらに、第一審公判において弁護人が当該自白を証拠とすることに同意している事実も考慮される。 2. 憲法37条2項の趣旨は、裁判所が必要性を認めた証人について適正な手続を保障するものであり、無限定にすべての申請を採用すべき義務を負わせるものではないため、本件の証人不採用は憲法違反にあたらない。
結論
本件各自白は不当な拘禁後のものとはいえず、また被告人申請の証人を取り調べなかったことも憲法37条2項に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の証拠能力(任意性)の判断において、勾留期間の長さだけでなく捜査の具体的状況を総合考慮する実務の基礎となる。また、証人採否に関する裁判所の裁量を肯定する判例として、公判前整理手続等における証拠決定の文脈でも参照される。
事件番号: 昭和26(あ)4465 / 裁判年月日: 昭和28年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項が保障する証人尋問権は、裁判所が必要と認めて喚問を許容した証人について十分な反対尋問の機会を保障する趣旨であり、証拠同意がある場合には同条項違反の問題は生じない。 第1 事案の概要:被告人が賭博罪等に問われた事件において、弁護人は憲法37条2項の証人尋問権の侵害を主張して上告した。し…
事件番号: 昭和26(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
公判廷外における被告人の自白の任意性の有無の調査は、必ずしも証人の取調によるの要なく、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができる。