原審は、第一審判決が適法に認定判示する本件犯罪事実に触れることなく単に犯情を考察するに当り、被告人の自供を引用したに過ぎないものであるから、被告人の自白のみによつて有罪として処断したものというを得ない。
控訴審が第一審の量刑を判断するに当つて被告人の自供を引用したに過ぎない場合と憲法第三八条第三項
憲法38条3項,刑訴法381条,刑訴法396条
判旨
第一審が適法に認定した犯罪事実に触れず、控訴審が量刑判断の際の情状(犯情)の考察として被告人の自供を引用したとしても、それは自白のみによって有罪としたことにはならない。
問題の所在(論点)
控訴審が量刑(犯情)の判断に際して被告人の自白を引用した場合、それが憲法38条3項及び刑事訴訟法319条1項にいう「自白のみによって有罪として処断」したものに当たるか。
規範
憲法38条3項及び刑事訴訟法319条1項の自白の補強法則は、有罪判決の基礎となる犯罪事実(罪となるべき事実)の認定について適用される。量刑の前提となる情状(犯情等)の判断において自白(被告人の供述)を考慮することは、直ちに自白のみによる有罪認定を禁じた規定に抵触するものではない。
重要事実
第一審判決が適法な証拠に基づき犯罪事実を認定し有罪を言い渡した。被告人が量刑不当を理由に控訴したところ、原審(控訴審)は、第一審が認定した犯罪事実に直接言及することなく、諸般の情状を総合して科刑を相当と認める過程において、被告人の自供を引用して犯情を考察した。
あてはめ
原審は第一審判決が適法に認定した犯罪事実に変更を加えるものではない。単に量刑判断の過程において犯情を具体的に考察するために被告人の自供を用いたに過ぎない。したがって、第一審の認定した証拠関係を前提とする限り、有罪認定そのものを自白のみに依拠させたとは評価できない。
結論
被告人の自白を量刑判断の資料として引用しても、直ちに自白のみによる有罪認定とはならず、憲法および刑事訴訟法に違反しない。
実務上の射程
自白の補強法則が及ぶ対象は「罪となるべき事実」であり、量刑事情の認定には必ずしも補強証拠を要しないことを示唆する。答案上は、補強証拠の要否を論ずる際、実体的真実主義の観点から「犯罪事実」の認定に限定されることを説明する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(あ)2700 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: 棄却
憲法第三八条第三項は、犯罪事実の認定について、その自白の真実性を保証するに足る他の証拠を必要としているのであつて情状に関する事実についてまで補強証拠を必要としているものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二四年(れ)第八二九号同二五年一一月二九日判決、刑集四巻一一号二四〇二頁参照)の趣旨に徴して明らかである。