判旨
裁判の迅速性が損なわれたとしても直ちに違憲として判決を破棄し審判を打ち切ることはできず、また未決勾留日数の本刑算入は裁判所の裁量事項である。
問題の所在(論点)
刑事裁判における審理期間の長さが憲法37条1項(迅速な裁判)に違反するか、および未決勾留日数を本刑に算入しないことが憲法に違反するか。
規範
憲法37条1項が定める「迅速な裁判を受ける権利」の侵害については、審判が不当に遅延したとしても、それを理由に原判決を破棄し、更に審判を求めることを許さない(免訴等による打ち切り)とすることはできない。また、未決勾留日数の算入は裁判所の裁量に属し、算入しないことが直ちに憲法に違反することはない。
重要事実
被告人は昭和24年11月3日に逮捕され、同25年6月9日に第一審判決を受けた。その間、207日を要したことから、被告人は迅速な裁判を受ける権利を奪われたと主張。また、未決勾留日数が本刑に算入されなかった点についても憲法違反を主張して上告した。なお、被告人は勾留後、起訴から10日後に保釈され、その後は不拘束のまま審理を受けていた。
あてはめ
審理期間については、当時の下級裁判所における刑事事件の受入実情を考慮すれば、約7ヶ月の審理期間が必ずしも迅速でないとはいえない。また、被告人は起訴後速やかに保釈されており、身体拘束が不当に長期化した事実もない。さらに、未決勾留日数の算入に関しては、刑法等の規定に基づき裁判所の合理的な裁量に委ねられている事項であり、算入しなかったとしても裁量の範囲内として容認される。
結論
本件の審理過程および未決勾留日数の不算入は、憲法37条1項等の諸規定に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
「迅速な裁判」の侵害に対する救済策として、後の高田事件判決(最大判昭47.12.20)が極端な遅延の場合に免訴を認めたため、本判決の「いかなる場合も破棄・打ち切り不可」とする部分は変更されている。一方で、未決勾留日数の算入が裁量事項である点は、現在の実務でも基本原則として維持されている。
事件番号: 昭和26(れ)846 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の迅速が著しく損なわれ憲法37条1項に違反する場合であっても、それが直ちに判決に影響を及ぼすものとはいえず、原則として控訴・上告理由にはならない。また、審理の遅延を科刑上の考慮要素とするか否かは量刑の不当の問題に帰する。 第1 事案の概要:本件において、上告人は、原審の裁判が迅速を欠き、憲法3…
事件番号: 昭和37(あ)1066 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
本件被告事件につき、第一審の有罪判決が言い渡され、被告人から控訴の申立をなし、第一審の大分地裁日田支部から原審の福岡高等裁判所え一件記録が送付せられる迄二年五ケ月以上を経過していること、その遅延した理由が第一審担当事務官の過失によるものであることは所論のとおりであるが右の如き事情で裁判の迅速を欠いたとしても、これにより…