証人を検証現場において尋問するに際し刑事訴訟法一五八条二項、刑事訴訟規則一〇八条一項所定の尋問事項の告知をした形跡が記録上認められない違法があるが、右証拠調の決定は、当事者の意見を聴いて公判延でなされた上、右各証人の尋問においてはいづれも被告人並びに被告人の弁護人が立会い何等異議を述べず殊に弁護人は右各証人に対し尋問している場合には、右法令違反は、単なる訴訟手続の違法に過ぎず、これを以て憲法三七条に違反するとの論旨の当らないことは勿論であるのみならず、刑訴四一一条にも当らない。
裁判所外における証人尋問手続に違法がある判決と憲法第三七条第二項及び刑訴法第四一一条。
憲法37条2項,刑訴法158条2項,刑訴法411条,刑訴規則108条1項
判旨
裁判所外の証人尋問において、法所定の尋問事項の告知手続を欠いたとしても、当事者が立ち会い異議なく尋問が行われた等の事情があれば、直ちに憲法違反や判決の破棄事由には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判所外で証人尋問を行う際、被告人側に対する尋問事項の告知手続(刑訴法158条2項、刑訴規則108条1項)を欠いた場合、その手続違背が憲法37条違反や絶対的破棄事由(刑訴法411条)に該当するか。
規範
刑事訴訟法158条2項及び刑事訴訟規則108条1項に定める尋問事項の告知手続に違背したとしても、それは単なる訴訟手続の違法に過ぎない。当該違法が、被告人の防御権を実質的に侵害するなど、憲法37条(証人審問権等)に違反したり、判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合(刑訴法411条1号)に該当したりしない限り、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
重要事実
第一審裁判所が裁判所外で検証を行った際、その現場で検察官の申請に基づき証人2名(A、B)の尋問を実施した。この際、裁判所は刑訴法158条2項等に定められた「尋問事項の告知」を行った形跡が記録上認められなかった。しかし、事前の公判廷において検察官は立証事項を陳述した上で尋問を申請し、弁護人も意見を述べた上で採用されていた。実際の尋問現場には被告人及び弁護人が立ち会っており、手続の違背について異議を述べず、弁護人は自ら証人に対する反対尋問も行っていた。
あてはめ
本件では尋問事項の告知が欠けており手続上の違法はある。しかし、(1)公判廷での申請手続を通じて被告人側は尋問内容を事前に予測し得たこと、(2)尋問当日に被告人及び弁護人が立ち会い、手続違背に異議を述べていないこと、(3)弁護人が実際に尋問権を行使していることが認められる。これらの事情に照らせば、被告人の審問権や防御権は実質的に保障されており、告知の欠如という形式的違法は、憲法37条に違反するものではなく、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとも解されない。
結論
尋問事項の告知を欠いた手続違法は認められるが、上告理由には当たらないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
手続規定に違反がある場合でも、その規定の趣旨(本件では防御権の保障)が実質的に害されていないことを、当事者の立会いや異議の有無、実際の防御活動(反対尋問の実施等)から論証する際の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1077 / 裁判年月日: 昭和26年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官の冒頭陳述前になされた被告人側申請の証人の尋問手続きについて、直ちにその証拠能力を否定すべき違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:第一審の公判手続において、検察官による冒頭陳述が行われるより前の段階で、被告人側が申請した証人の尋問が行われた。弁護人は、この証人尋問が刑訴法296条に違反…