判旨
取締役社長が会社の工員の食用に供する目的で精麦等を公定価格を超過して買い受けた行為は、物価統制令11条にいう「業務に関し」なされたものと認められる。
問題の所在(論点)
法人の代表者が行った闇買い行為が、法人の「業務に関し」なされたものといえるか(物価統制令11条の意義)。
規範
物価統制令における「業務に関し」とは、単に行為者自身の個人的な業務を指すのではなく、その行為の目的、意図、態様等を総合的に考慮し、実質的に会社の業務の遂行に関連して行われたと評価できる場合を包含する。
重要事実
被告人はある会社の取締役社長の地位にあり、同社の工員の食用に直接供する等の目的および意図をもって、精麦等を公定価格を超過して買い受けた。この行為が物価統制令11条の「業務に関し」に該当し、法人の刑事責任(両罰規定の適用等)の前提となるかが争点となった。
あてはめ
被告人の買受行為は、自己が経営する会社の工員の食糧確保という目的で行われており、この目的・意図に照らせば、当該行為は結局のところ右会社の業務に関連してなされたものと評価できる。したがって、被告人自身の固有の業務ではないとしても、会社の「業務に関し」なされたものと解するのが相当である。
結論
被告人の行為は、会社の「業務に関し」なされたものと認められ、物価統制令11条の要件を満たす。
実務上の射程
法人の代表者や従業員による行為が、形式的に法人の事業範囲内であるかだけでなく、その目的(従業員の福利厚生や事業継続のための資材調達等)が法人の利益や運営に資するものである場合には「業務に関し」の要件を広く認める傾向を示す。両罰規定の適用範囲を検討する際の判断材料となる。
事件番号: 昭和25(あ)2558 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令等に違反する超過代金での買受け(売買契約)において、単なる金銭の引渡行為のみならず、その合意(契約)があったと認められる場合には、同令違反の罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が、法令の規定により定められた制限額を超える代金(超過代金)で小麦粉を買い受ける契約を締結した。弁護人は、こ…