物価統制令第四〇条の法人の業務は必ずしも法人の定款に定めた事業に限らるべきものでなく、その定款に定めがなくとも、法人の取引上の地位に基いて、その業務としての客観性が認められる程度に一定の取引又は事業を実行する場合をも含むものと解するのを相当とする。被告会社は富山市に通称支社を置き又はその支社に土建部を設けて富山縣から依頼を受けて宇奈月温泉の復旧工事に当つていたものであることは、原判決挙示の証拠たる被告人Bの供述等により認められるから本件違反行為当時たとい土木建築請負事業について其筋からまだ許可がなく又定款にその条項がなかつたとしても、右事業は縣当局その他一般取引関係において客観的にも被告会社の業務たる性質を帯びていたものである。この見地から原判決は被告会社が土木建築業を営んでいたものと判示したと解すべきである。然らば右業務に関して被告人B及びCが判示物価統制令違反の行為をしたものであるから原判決が被告会社に同令四〇条を適用処断したのは正当であつて原判決には所論の違法はない。
物価統制令第四〇条にいわゆる会社の業務はその定款に定められた事業の範囲に限られるか
物価統制令40条
判旨
両罰規定における法人の「業務」とは、必ずしも定款所定の事業に限られず、法人の取引上の地位に基づき、業務としての客観性が認められる程度に一定の取引又は事業を実行する場合を含む。
問題の所在(論点)
両罰規定(物価統制令40条)の適用対象となる法人の「業務」の範囲。定款外の事業や行政上の認可を欠く事業に関して行われた違反行為について、法人が刑罰を科されるか。
規範
物価統制令40条(両罰規定)にいう法人の「業務」は、必ずしも法人の定款に定めた事業に限定されない。定款に定めがなくとも、法人の取引上の地位に基づき、その業務としての客観性が認められる程度に一定の取引又は事業を反復・継続して実行している場合には、これに含まれると解するのが相当である。
重要事実
被告会社Fは、定款上は製鉄業や土木建築請負業等を目的としていたが、土木建築業については当局の認可を得ていなかった。しかし、実際には富山市に支社及び土建部を設け、県当局の依頼を受けて温泉の復旧工事に従事していた。同支社の業務管理を行っていた被告人B及び土建部長Cは、当該事業の資材として板硝子を多量に購入し、またはこれを第三者に転売する際、物価統制令に定める統制額を超えた価格で取引を行った。弁護人は、当該事業が認可未了であり定款上の業務ではないから、会社を処罰できないと主張した。
あてはめ
被告会社は、現に支社を設置し組織的な部門(土建部)を設けて自治体からの工事請負を継続していた。このような実態がある以上、たとえ土木建築事業について行政上の認可が未了であり、定款に具体的な根拠条項が欠けていたとしても、県当局や一般の取引関係においては客観的に被告会社の業務としての性質を帯びていたといえる。したがって、当該事業に関する被告人B・Cの違反行為は、被告会社の「業務に関し」てなされたものと認められる。また、被告人らに営利の目的がなかったとしても、法人の業務に関する行為である以上、同令の処罰対象となる。
結論
被告会社につき、その定款外の事業であっても客観的に業務性が認められる以上、物価統制令40条に基づき処罰を免れない。上告棄却。
実務上の射程
法人の刑事責任を問う際、当該行為が「法人の業務」に該当するか否かは、定款等の形式的な定めではなく、取引上の実態から客観的に判断される。定款外の行為や公法上の規制に反する無許可営業であっても、法人の活動として実体を有する限り、両罰規定の適用を免れることはできないという実務上の準則を示している。
事件番号: 昭和24(れ)1902 / 裁判年月日: 昭和24年11月29日 / 結論: 棄却
被告人A森林組合連合會の資材課長Bと右連合會の所屬組合以外の者との判示取引はB個人の業務として爲したものではなくBの右連合會の資材課長の資格で右連合會の業務として、而かも反覆して取引をしたものである以上、所屬組合以外の者との取引は右連合會の定款に定めがないとしても、右連合會の業務に關して爲したるものではないといい得ない…
事件番号: 昭和25(れ)1237 / 裁判年月日: 昭和26年2月23日 / 結論: 棄却
原判決が本件公訴事実につき無罪の言渡をした理由は有限責任A縣勤労者生活協同購買利用組合連合会(略称生協連)は消費者が生活必需物資を自己のため協同購入し之を自己のため配分する団体であり、団体員以外の者に転売して利を営むことを目的とするものにあらざるは勿論被告人両名も亦右団体の役員としてその事務に従事し報酬として給料を受く…