原判決が本件公訴事実につき無罪の言渡をした理由は有限責任A縣勤労者生活協同購買利用組合連合会(略称生協連)は消費者が生活必需物資を自己のため協同購入し之を自己のため配分する団体であり、団体員以外の者に転売して利を営むことを目的とするものにあらざるは勿論被告人両名も亦右団体の役員としてその事務に従事し報酬として給料を受くるのみで本件買受行為において利を営んだものではない。従つて被告人両名の行為は物価統制令第一一条但書違反としての犯罪構成要件を充たさざるものであるというのである。しかし本件において被告人両名の所為が営利を目的としたものではないという理由から直ちに同令第一一条但書自己の業務に属するものでないと論結することはできない訳である。それゆえ原審は単に被告人両名の所為が営利を目的とするものでないと判断しただけでは被告人等を無罪とすることはできないのであつて、さらに進んで本件契約をすることが右生協連の業務に属するものであるや否や、また被告人両名が右生協連の機関として右生協連の取引として右契約を締結したかどうかの点について審理判断をすることを要するものといわなけれはならない。
生活協同購買利用組合役員の統制額超過買受行為と物価統制令第一一条違反
旧刑訴法49条1項,物価統制令3条,物価統制令11条
判旨
物価統制令における「自己の業務」としての契約締結には、営利目的の有無にかかわらず、団体の機関としてその目的達成のために行われる行為が含まれるため、営利性の欠如のみをもって直ちに同令の犯罪構成要件を否定することはできない。
問題の所在(論点)
物価統制令11条但書(および3条等)の規定する「自己の業務」に該当するか否かの判断において、営利目的の有無が決定的な要件となるか。営利目的がない場合であっても、団体の目的範囲内の行為であれば「業務」として規制対象になり得るか。
規範
物価統制令(昭和21年勅令第118号)における「自己の業務」の該当性は、営利を目的とするか否かによって決まるものではない。たとえ営利を目的としない契約であっても、当該契約を締結することが当該団体の事務・事業の範囲内に属し、かつ、行為者がその団体の機関として当該取引を行ったのであれば、同令の規制対象となる「業務」に該当する。
重要事実
生活協同購買利用組合連合会(生協連)の役員である被告人両名が、生活必需物資の買受行為を行った。原審は、生協連が共同購入・配分を目的とする団体であり、転売による営利を目的としていないこと、また被告人らも役員として給料を得るのみで本件買受により利を営んだわけではないことを理由に、物価統制令11条但書が規定する犯罪構成要件を充足しないとして無罪を言い渡した。これに対し、検察官が上告した。
あてはめ
物価統制令の規定によれば、営利目的を欠く場合であっても、契約をなすことが自己の業務に属する場合には同令違反の罪を構成し得る。本件において、生協連が非営利団体であり、被告人らに営利の目的がなかったとしても、直ちに「自己の業務に属しない」と判断することはできない。裁判所は、①当該契約の締結が生協連の業務範囲内のものであるか、②被告人両名が生協連の機関として、生協連の取引として契約を締結したか、という実態的な業務遂行性の有無を審理・判断すべきである。原審は営利性の欠如のみを理由に無罪としており、審理不尽・理由不備がある。
結論
被告人らの行為が営利目的でないという一事をもって、直ちに物価統制令上の「業務」性を否定することはできない。原判決を破棄し、当該行為が生協連の業務および機関としての行為に該当するかを再審理させるため、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
行政法規や統制法規における「業務」の概念が、私法上の営利概念よりも広く、団体の目的範囲内の活動一般を包含することを示した事例である。司法試験においては、行政刑罰の構成要件解釈において、単なる営利性の有無ではなく、組織の目的や権限、客観的な活動実態に基づいて「業務」性を判断すべきとする論理として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1707 / 裁判年月日: 昭和26年3月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が同一の事件に関連する複数の供述のうち、自由心証に基づいて一部を信じ、他を信じなかったとしても、それらが別個の供述である以上、採証法則に反するものではない。共犯者間や売買の当事者間で有罪・無罪の結論が分かれることがあっても、直ちに理由齟齬の違法が生じるわけではない。 第1 事案の概要:被告人…