原判決が被告人等の量刑を考察するにあたつて、「本件犯行の動機、態様その他諸般の情状殊に被告人等が当時犯罪検挙の職責を有する司法巡査でありながらその着用した制服を利用して犯したものである点を顧慮」したというのは、司法巡査という職業に伴う社会的道義的責任の重大さを情状として参酌したという趣旨に解すべきであるから、これを以て所論のように憲法一四条の平等の原則に違背するものと云い得ない。
量刑にあたつて被告人が現職の警察官である点を考慮することと憲法第一四条
憲法14条,刑訴法335条
判旨
憲法14条は、各人の職業や特別の関係等の事情を考慮して具体的規定を設けることを妨げず、司法巡査という職業上の社会的道義的責任を量刑上の情状として参酌することは同条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法上の量刑判断において、被告人が「司法巡査」という特定の職業にあることやその職責に伴う社会的道義的責任を情状として参酌することが、憲法14条1項の法の下の平等に違反するか。
規範
憲法14条の法の下の平等は、法が国民の基本的平等の原則の範囲内において、各人の年齢、自然的素質、職業、人と人との間の特別の関係等の各事情を考慮して、道徳、正義、合目的性等の要請より適当な具体的規定をすることを妨げるものではない。また、刑罰の量定において、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の情状等を審査し、特別予防及び一般予防の要請に基づき各犯罪・犯人ごとに妥当な処遇を講じた結果、他の犯人より重く処罰されることがあっても、同条の原則に違反しない。
重要事実
被告人らは、犯罪検挙の職責を有する司法巡査であったが、その着用していた制服を利用して本件犯行に及んだ。原審は、被告人らの量刑を考察するにあたり、犯行の動機や態様に加え、司法巡査という職業的立場を重く考慮して刑を量定した。これに対し弁護人は、職責を理由に重く処罰することは憲法14条の平等原則に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決が司法巡査である点を考慮したのは、単なる身分による差別ではなく、職務上の知見や制服という社会的信用を悪用したという「犯罪の情状」および「社会的道義的責任」を評価したものである。これは、個別の犯人について特別予防・一般予防の見地から適切な処遇を講じるための合理的な事情の参酌といえる。したがって、職業上の立場を情状として重く評価し、結果として他の犯人より重い刑を科したとしても、それは正義・合目的性の要請に基づく妥当な処遇の範囲内である。
結論
司法巡査という職責を量刑上の情状として参酌することは憲法14条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、刑罰の個別化の要請と憲法14条の関係を示したものである。答案上では、特定の身分や職業に基づく加重処罰(刑法200条尊属殺規定等)の合憲性が争われる際の比較対象として活用できる。特に、法定刑自体の差別ではなく、裁判官の裁量による量刑段階での事情参酌であれば、職業的責任等の合理的理由がある限り広く許容されることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和25(あ)1734 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の前科や犯罪の情状等を参酌し、他の類似事案と異なる刑を言い渡したとしても、憲法14条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪に問われ、原審において窃盗の前科2犯があること、犯行の手口、盗品(賍物)の数量、その他の諸般の事情が考慮された結果、有罪判決を受け…