一 裁判所の事物管轄に關する事柄は憲法第八一條の場合を除いては、國會が事件の性質、種類、裁判所の機能その他諸般の事情を考量して、時宜に適するように法律を以て規定するところに一任されていると解すべきことは昭和二二年(れ)第二八〇號同二三年七月二九日大法廷判決(判例集第二卷第九號第一〇〇七頁以下參照)に示すとおりである。 二 昭和二三年一月一日施行の裁判所法の一部を改正する法律は迅速な裁判をなすべき憲法の要請、裁判所の機能、事件の種類、性質、件數等に鑑み從來地方裁判所の裁判權に屬せしめていた事件の中、刑法第二三五條の窃盜罪若しくはその未遂罪に係る訴訟を簡易裁判所の裁判權に屬せしめ、これ等の事件又はこれ等の犯罪と他の罪とにつき刑法第五四條第一項の規定によりこれ等の罪の刑を以て處斷すべき事件においては簡易裁判所は三年以下の懲役を科することができると定めたものであることは所論、裁判所法の一部を改正する法律案の提案理由に照らして明らかなところであつて、被告人の人種、信條、性別、社會的身分又は門地によつて差別をしたものでないことは多言を要しないところである。されば右改正法律は憲法第一四條に反しない。
一 裁判所の事物管轄に關する國會の立法權 二 昭和二三年一月施行裁判所法の一部を改正する法律の合憲性(憲法第一四條)
憲法81條,憲法14條、憲法37條1項,裁判所法33條,昭和23年1月裁判所法の一部を改正する法律,刑法235條
判旨
裁判所の事物管轄の規定は、事件の性質や裁判所の機能等を考慮して立法府の裁量に委ねられており、特定の犯罪について簡易裁判所の権限を拡大する改正法は憲法14条に反しない。
問題の所在(論点)
特定の犯罪種別に着目して簡易裁判所に重い刑罰権を付与し、他の犯罪種別や裁判所制度と区別することが、憲法14条の「法の下の平等」に反しないか。
規範
裁判所の事物管轄に関する事項は、憲法81条の場合を除き、国会が事件の性質、種類、裁判所の機能その他諸般の事情を考量し、時宜に適するように法律で規定することに一任されている。かかる区別が人種、信条、性別、社会的身分、門地による差別にあたらない限り、合理的な立法裁量の範囲内として憲法14条に反しない。
重要事実
裁判所法の一部を改正する法律(昭和23年法律第1号)により、従来は地方裁判所の管轄であった刑法235条の窃盗罪およびその未遂罪、またはこれらと観念的競合(刑法54条1項)の関係にある事件について、簡易裁判所の第一審管轄権を認め、さらに3年以下の懲役を科すことができるとする特例が設けられた。被告人は、当該改正法に基づく簡易裁判所の審判を受けたが、これが憲法14条に違反する差別であるとして争った。
あてはめ
本件改正法は、迅速な裁判という憲法上の要請(憲法37条1項)や、裁判所の機能、事件の種類、性質、件数等に鑑みて制定されたものである。これは窃盗罪等の特殊性に基づく合理的な区分であって、被告人の人種、信条、性別、社会的身分または門地といった、憲法14条が禁じる不当な属性による差別を行うものではない。したがって、立法府が諸般の事情を考慮して事物管轄を定めたことは、裁量権の適正な行使の範囲内といえる。
結論
本件改正法律は憲法14条に違反しない。したがって、同法に基づき簡易裁判所が行った第一審判決は有効である。
実務上の射程
事物管轄の決定に関する広範な立法裁量を認めた判例である。法の下の平等に関する論案において、事物の性質に応じた合理的区別の許容性を基礎づける際に活用できる。特に「事件の性質、裁判所の機能、迅速な裁判の要請」といった要素が、合理的区別の根拠となり得ることを示している。
事件番号: 昭和26(あ)413 / 裁判年月日: 昭和27年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審裁判所が、諸般の情状から導かれる犯情の差異を考慮して、被告人を他の者より重く処罰することは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴された際、原判決は記録および証拠に現れた諸般の情状を考慮し、有利な事情を勘酌してもなお犯情が軽くないと判断した…