判旨
入場税の納期を争い、事後的に完納した旨を主張して犯罪の成立を否認しても、所定の納期までに納付がなされていない以上、法令適用の誤りや刑訴法411条の適用事由には当たらない。
問題の所在(論点)
刑法上の犯罪成否に関し、納期限の解釈や事後の完納の事実が、法令適用の誤り(刑訴法405条)や職権破棄事由(同411条)に該当するか。
規範
租税に係る犯罪の成否に関し、法令の規定により定められた納期限までに納付がなされていない場合には、その後に財務事務所の了解を得て完納したとしても、納期限の徒過をもって直ちに犯罪の成立を妨げるものではない。また、条例上の納期限が主張と異なっていたとしても、実際の納付がそのいずれの期限にも遅れているのであれば、判決に影響を及ぼすべき法令違反とはならない。
重要事実
被告人は、第一審判決が認定した入場税の脱税等の事実につき、その納期について争いがあったこと、および昭和23年11月9日に財務事務所の了解を得て入場税を完納したことを理由に、犯罪は成立しないと主張して上告した。仮に被告人が主張するように福岡県条例等において納期が翌月10日までであったとしても、被告人が当該期日までに納入した事実は認められなかった。
あてはめ
被告人は事後的な完納を主張するが、これは既に成立した犯罪に影響を与えるものではない。また、納期限が翌月10日であったとする予備的な主張についても、現実の納付がその期日内に行われていない以上、第一審の事実認定を覆してまで法令適用の誤りを認めるべき理由にはならない。したがって、上告趣意は実質的な事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由に当たらない。
結論
被告人の主張は刑訴法405条の上告理由に該当せず、また刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべきものとも認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
租税法規に違反する罪において、事後の納税による補填や納期解釈の争いがあっても、客観的な納期限の徒過が認められる限り、犯罪の成立自体は否定されないことを示す。事実誤認を法令違憲等に擬装する上告趣意に対し、上告理由不該当として処理する際の論理として機能する。
事件番号: 昭和28(あ)3384 / 裁判年月日: 昭和30年12月15日 / 結論: 棄却
地方税(映画観覧入場税)の特別徴収義務者(映画劇場代表者)が、県条例の定めるところに従い、各月に徴収した地方税を翌月一〇日までに県に納入しなければならないのに、数ケ月にわたつて、徴収した地方税を期日までに納入しなかつた場合には、各月文ごとに一個の地方税不納入罪が成立する。