地方税(映画観覧入場税)の特別徴収義務者(映画劇場代表者)が、県条例の定めるところに従い、各月に徴収した地方税を翌月一〇日までに県に納入しなければならないのに、数ケ月にわたつて、徴収した地方税を期日までに納入しなかつた場合には、各月文ごとに一個の地方税不納入罪が成立する。
数ケ月にわたる地方税不納入と罪数
旧地方税法(昭和23年法律110号、ただし昭和24年5月法律169号による改正後のもの)136条2項,旧地方税法(昭和23年法律110号、ただし昭和24年5月法律169号による改正後のもの)237条の4,旧地方税法(昭和23年法律110号、ただし昭和24年5月法律169号による改正後のもの)140条,福岡県税賦課徴収条例(昭和23年8月福岡県条例36号、ただし昭和24年9月同条例64号までの改正を経たもの)108条1項,刑法45条前段
判旨
数か月にわたり徴収した入場税を不納入とした事実は、月ごとに独立した罪を構成し、それらは併合罪の関係に立つ。原判決がこれを単純一罪としたことは誤りであるが、被告人に不利益な変更となる場合は刑訴法411条を適用すべきではない。
問題の所在(論点)
数か月にわたる入場税の不納入事実が、単純一罪となるのか、あるいは月ごとに別罪が成立し併合罪となるのか。また、数罪を包括的一罪と誤認した原判決につき、刑訴法411条を適用して破棄すべきか。
規範
一定の期間ごとに納付義務が生じる税の不納入罪において、各期間(各月)の不履行は、それぞれの期間ごとに独立した一個の犯罪を構成し、それらは併合罪(刑法45条)の関係に立つ。
重要事実
被告人は、昭和24年10月から昭和25年5月までの各月において、徴収した入場税を不納入とした。原審は、この数か月にわたる一連の不納入事実を単純一罪として処断した。
あてはめ
入場税の納付義務は月ごとに発生するものであるから、各月の不納入は各別に罪を構成すると解すべきである。したがって、本件の8か月間にわたる不納入事実は、併合罪として処断されるべきであり、これを単純一罪とした原判決には法令の適用に誤りがある。しかし、併合罪として処断し直すことは被告人にとってより重い刑を科す結果を招き、不利益な処断となることが明らかである。
結論
各月の入場税不納入は併合罪となるが、単純一罪とした原判決を破棄することは被告人に不利益となるため、刑訴法411条を適用せず、上告を棄却する。
実務上の射程
罪数判断において、義務の発生単位ごとに別罪が成立するという原則を示すものである。答案上は、包括的一罪の成否が問題となる場面で、義務の独立性や時間的間隔に着目する際の参考となる。また、上訴審において被告人に不利益な方向での法令誤りの是正は制限されるという実務上の運用を確認する際にも用いられる。
事件番号: 昭和27(あ)1057 / 裁判年月日: 昭和28年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決と第二審判決の間に「特別徴収義務者」の解釈に関する見解の相違があったとしても、いずれの見解に従っても被告人が当該義務者に該当すると認められる場合には、第一審判決を是認した判断に矛盾はなく適法である。 第1 事案の概要:被告人が、入場税法上の「特別徴収義務者」として徴収納付義務を負うかが争…