一 昭和二四年五月三一日法律第一六九号による改正前の地方税法第一三六条第二項の罪の主体となりうる者は、同法第三六条にいわゆる「特別徴収義務者」たる身分を有する者だけであつて、かような身分を有しない者は、右「特別徴収義務者」と共犯関係にないかぎり、同条の罪の主体となることができない。 二 昭和二四年五月三一日法律第一六九号による改正前の地方税法第一三九条に「行為者を罰する外」とあるからといつて、同法第三六条にいわゆる「特別徴収義務者」たる身分を有しない者が、かかる身分を有する者の従業者として同法第一三六条第二項所定の行為をした場合に、身分なき右行為者を処罰することはできない。
一 旧地方税法第一三六条第二項の罪の主体 二 旧地方税法第一三九条と同法第三六条の「特別徴収義務者」たる身分を有しない者が、かかる身分を有する者の従業者として同法第一三六条第二項所定の行為をした場合の不可罰性
地方税(昭和24・5・31法律169号による改正前のもの)36条,地方税(昭和24・5・31法律169号による改正前のもの)136条2項,地方税(昭和24・5・31法律169号による改正前のもの)139条
判旨
両罰規定により事業主が処罰されるためには、直接の行為者が当該処罰規定の構成要件に該当する行為を行うことが必要であり、行為者が身分犯の身分を有しない場合には、身分者との共犯関係が認められない限り事業主も罪責を負わない。
問題の所在(論点)
両罰規定に基づき事業主を処罰する場合において、直接の行為者が真正身分犯の構成要件(身分)を満たさないときでも、事業主を処罰することができるか。また、行為者の構成要件該当性が事業主の処罰の前提となるか。
規範
両罰規定(地方税法139条)は、行為者の所為が同条所定の犯罪の構成要件に該当することを前提とした規定である。したがって、特定の身分を有する者のみが主体となる真正身分犯(旧地方税法136条2項)において、身分を有しない行為者が身分者との共犯(刑法60条等)にならない限り、当該行為者を罰することはできず、その結果、事業主(特別徴収義務者)に両罰規定を適用して処罰することもできない。
重要事実
興行の主体である鉱員組合が特別徴収義務者(身分者)であり、被告人はその代表者等であった。組合の実務を担当した従業員A及びBが、入場税等に関する違反行為(旧地方税法136条2項)を行ったとして起訴された。原審は、A及びBが「特別徴収義務者」の身分を有するか否か、あるいは身分者との共犯関係にあるかを確定しないまま、両名の行為が同法136条2項に該当すると判断し、これを前提に被告人(事業主)に両罰規定を適用して有罪とした。
あてはめ
旧地方税法136条2項の罪は、特別徴収義務者という特定の身分を有する者のみが主体となる身分犯である。本件において、直接の行為者であるA及びBがこの身分を有しておらず、かつ身分を有する被告人と共犯関係にあることも認定されていない以上、A及びBの所為は同法136条2項の罪の構成要件を充足しない。両罰規定は「行為者を罰する外」と規定する通り、行為者の犯罪成立を前提とするものであるから、前提となる行為者の犯罪が認められない本件において、被告人を処罰することは法律の解釈適用を誤ったものといえる。
結論
行為者が身分を有さず身分犯としての構成要件を満たさない以上、事業主に両罰規定を適用することはできず、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
両罰規定の適用における「行為者の構成要件該当性」の必要性を示した射程の長い判例である。答案上は、両罰規定の性質(過失責任説を前提としつつも、客観的な処罰条件としての行為者の適格性)を論じる際に、行為者が身分犯の要件を欠く場合に事業主の処罰が否定される論拠として引用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1057 / 裁判年月日: 昭和28年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決と第二審判決の間に「特別徴収義務者」の解釈に関する見解の相違があったとしても、いずれの見解に従っても被告人が当該義務者に該当すると認められる場合には、第一審判決を是認した判断に矛盾はなく適法である。 第1 事案の概要:被告人が、入場税法上の「特別徴収義務者」として徴収納付義務を負うかが争…