一 しかし、旧地方税法第一三六条第二項の規定は、特別徴収義務者が徴取すべき地方税を故意に徴収せず又は徴収した地方税を故意に納入しなかつた場合に成立する脱税に関する犯罪の処罰規定であつて、地方税の単なる滞納の場合の規定ではない。されば同条項の犯罪事実を判示するには、所論のごとき知事又は市長の発令の有無、特別徴取義務者が払込告知書を受取つたか否か及び指定期日に払込を了したか否か等の事実を確定判定するの要はない。 二 旧地方税法第一三六条第二項の犯罪は、特別徴収義務者が徴収すべき地方税を故意に徴収せず、又は徴収した地方税を故意に納入しないときは直ちに成立し、不徴収又は不納入の手段方法の如何を問わないものであり、従つて、判事虚偽の報告が所論同法第一三七条第一号に触れることがあつても、前記条項の犯罪の成立を阻却しないものであるから、原判決が判示事実に対し同条項を適用処断したのは正当であつて、原判決には所論の違法は認められない。 三 本件入場税の納入期日が徴収した月の翌月中であることは法令である高知縣条例によつて明らかであり、判示逋脱の入場税については昭和二三年八月中に徴収されたものであることは原判決の認定判示したところである。そして特別徴収義務者の徴収した入場税の納入期日が右のごとく条例上徴収した月の翌月中に到来すべきものであるから、徴収した月が認定判示されていれば特にその納入期日を明示しなくとも自ら確定されるわけである。されば原判決は判示入場税の徴収日を八月四日から同月一〇日迄及び一八日から月末頃迄の間と確定判示し、その納入期日をその頃納入すべかりし期日にと説明した以上、旧地方税法第一三六条第二項違反罪の判示として何等欠くるところは存しない。又督促状を発することは納入しない入場税金について徴収義務者に対して滞納処分を行う法律上の要件であるにとどまり、不納入罪成立の要件ではない。されば原判決が判示逋脱の入場税金について督促状の発せられた事実及指定納入期日を判示しなかつたからといつて、原判決には違法のかどは存しない。 四 拘禁が不法であつてもその一事を以て直ちに拘禁中の供述が強制その他不任意のものであると速断することもできない。 五 しかし一九五〇年一〇月一八日附連合国最高司令官総司令部覚書施行期日たる同年一一月一日以前においては、連合国人である証人に対しては一般に宣誓をさせる場合でも偽証の罰を告げないのを相当と解すべきである(昭和二四年(れ)第一六七号同年七月九日第二小法廷判決判例集三巻八号一一九三頁以下参照)ばかりでなく、旧刑訴第一九九条は証人に偽証の罪に陥ることのないようにその注意を喚起せしめる趣旨の訓示的規定と解するを相当とするから、たとえ同規定に反して裁判所が証人に偽証の罰を告げなかつたとしても、その供述は証言たるの効力を妨げられるものではない。されば原判決には所論のような違法は存しない。 六 本件のような昭和二三年八月一日以後同二四年六月一日以前に係る高知縣税入場税、高知市税入場税附加税犯則事件には国税犯則取締法の規定は適用も準用もされない筋合であることは多言を要しないところである。従つて本件高知縣税入場税高知市税入場税附加税の犯則事件に国税犯則取締法の規定の適用又は準用のあることを前提とする各論旨はいずれもその前提を欠きとるをえない。 七 原判示とその挙示する各証拠とを対照してみると原判決は判示入場税の特別徴収義務者はAであつて被告人B、同C、同D等は徴収義務者たる身分のない者で徴収義務者Aの判示入場税の一部逋脱に加功したものであると認め、刑法第六五条第一項を適用して被告人B等をAの判示逋脱犯の共犯者として処断したものであることを推断しえられるのである。そして刑法第六五条第一項のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り、特にこれを判決中に明示する必要のないものである。 八 地方税法第一三六条第一項の規定は地方税の納税義務者が詐欺、その他不正の行為によつて地方税を逋脱した場合の処罰規定であり、同条第二項の規定は特別徴収義務者が徴収すべき地方税を納税義務者から徴収せず、又は納税義務者から徴収した地方税を納入しなかつた場合の処罰規定であつて、その不徴収又は不納入の手段、方法の如何を問わないから、本件のごとき特別徴収義務者が地方税たる判示入場税不納入の場合において、たとえ所論のような詐欺その他不正の行為が伴つたとしても同条第一項を適用すべきではなく、同条第二項を適用すべきであることは多言を要しないところである。
一 旧地方税法第一三六条第二項の罪の判示方 二 旧地方税法第一三六条第二項違反罪の成立と、同法第一三七条第一号 三 旧地方税法第一三六条第二項の罪の成立と同法第四一条所定の督促手続との関係 四 不法拘禁中における供述の任意性又は強制の有無 五 証人に宣誓前偽証の罰を告げなかつた場合と証言の効力 六 縣税入場税市税入場税附加税犯則事件につき国税犯則取締法の規定が適用又は準用されない事例 七 地方税特別徴収義務者の不納付行為加功者に対する刑法第六五条第一項の適用と総則規定を明示することの要否 八 旧地方税法第一三六条第一項と同条第二項の相違と同条第二項の適用
旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改定前のもの)136条2項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条2項,旧地方税法137条1号,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)36条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)37条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)41条,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)136条1項,旧地方税法(昭和25・7・31法律226号による改正前のもの)2項,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法199条,旧刑訴法360条の1項,刑訴応急措置法10条2項,国税犯則取締法12条の2,刑法65条1項
判旨
共謀共同正犯の成立には、謀議の具体的態様や日時・場所を詳細に判示する必要はなく、共謀に基づく実行行為が行われれば、不作為の関与であっても全額の責任を負う。また、身分なき者が身分者と共謀した場合は、刑法65条1項により共犯として処断される。
問題の所在(論点)
1. 共謀共同正犯の判示において、謀議の具体的態様を詳細に特定する必要があるか。2. 実行行為の具体的手段に関与せず、実行時に離脱していた共謀者の責任範囲。3. 特別徴収義務者でない者が脱税行為に加功した場合の罪責(身分犯の共犯)。
規範
1. 共謀の事実の認定において、謀議の日時、場所、具体的態様を逐一判示する必要はない。2. 共謀者の1人が実行行為を行った場合、他の共謀者は、その実行手段を直接分担せず、あるいは事後に現場を離脱していたとしても、実行行為を阻止しない限り、共謀に基づく結果全額について刑事責任を免れない。3. 地方税法上の特別徴収義務者という身分がない者であっても、身分を有する者と共謀して脱税行為(不納入)に加功した場合は、刑法65条1項により共犯が成立する。
重要事実
被告人Bらは、映画興行による入場税の一部を免れるため、興行主を偽装し、実際には共同興行を行いながら税を不納入とする共謀をA(特別徴収義務者)らと図った。その後、Aが二重販売等の手段を用いて実際に入場税を逋脱した。Bは、当該脱税の実行手段自体には直接関与しておらず、また税の納入期日には既に興行から手を引いていたとして、共犯としての責任を争った。
あてはめ
1. 判決は、共謀の存在が証拠により認められる以上、その詳細なプロセスを判示しなくとも理由不備にはならないとした。2. BがAと脱税の共謀をした事実は動かず、Aがその謀議に基づいて実行した以上、Bが具体的な脱税手法(二重販売)に関与していなくても、また実行行為を物理的に阻止していない以上、事後の離脱を問わず逋脱全額について責任を負う。3. 入場税の不納入罪は特別徴収義務者という身分を要するが、非身分者であるBらも刑法65条1項に基づき、身分者Aの犯行の共犯として処断される。
結論
被告人Bは、身分者Aと共謀して地方税を逋脱した共謀共同正犯としての責任を負い、実行手段への不関与や事後の離脱は免責理由とならない。
実務上の射程
共謀共同正犯の認定手法および刑法65条1項(真性身分犯の共犯)の適用場面において、典型的な判断枠組みを提供する。特に脱税のような身分犯における非身分者の加功について、不作為的な関与であっても共謀が維持されている限り広範に責任を認める実務上の指針となる。
事件番号: 昭和54(あ)1451 / 裁判年月日: 昭和55年10月31日 / 結論: 棄却
一 地方税法一二二条四項に「その行為者を罰する外」とあるのは、代表者・従業者等が法人又は人の業務に関し同条一項又は二項の違反行為に該当する行為をした場合には、同人らに当該規定による犯罪が成立し、同人らを処罰する趣旨である。 二 料理飲食等消費税の特別徴収義務者である法人の代表者がその法人の業務に関し地方税法一二二条一項…
事件番号: 昭和25(れ)216 / 裁判年月日: 昭和25年11月2日 / 結論: 棄却
原判決が被告人Aの判示虚偽公文書作成の所為に加功した所為に対し、刑法第六五条一項の適用を明示しなかつたことは所論のとおりである。しかし、同条項のごとき総則規定は特にこれが適用を明示しなくとも、これを適用したことを看取し得れば差支ないものといわなければならない。そして原判決は、その判示冒頭において被告人は昭和二一年三月三…