判旨
裁判所が証拠調べをしていない証拠を事実認定の基礎とすることは、訴訟手続上の重大な違法であり、その証拠が事実認定に不可欠なものである場合には判決の破棄事由となる。
問題の所在(論点)
証拠調べが行われていない証拠を判決の基礎として事実を認定することの可否、および当該違法が判決の破棄事由(旧刑訴法447条、448条の2)に該当するか。
規範
裁判所が特定の証拠を事実認定の基礎とするためには、公判期日において適法な証拠調べを経ることを要する。証拠調べがなされていない証拠に基づき事実を認定することは、適正手続に反する重大な訴訟手続の法令違反であり、かつ、その証拠が事実認定において重要な地位を占める場合には、当該違法は判決に影響を及ぼすべきものと解される。
重要事実
第一審または控訴審において被告人の殺人の事実を認定する際、裁判所は被告人および関係人Aに対する検察官面前調書を証拠として挙示したが、記録上、これらの証拠について公判廷で証拠調べが行われた形跡が認められなかった。また、これらの供述記載は殺意や実行行為などの事実認定において欠くことのできない重要な証拠であった。
あてはめ
原判決が事実認定の根拠とした被告人およびAの検事聴取書について、証拠調べをした形跡が見当たらない以上、これを証拠として採用した手続には違法がある。さらに、当該聴取書の内容は、これなくしては判示の事実認定を肯定することができないほどに重要な証拠であると認められる。したがって、証拠調べを経ない証拠に基づき重要事実を認定した手続の違法は、事実の確定に直接的な影響を及ぼしたものといえる。
結論
原判決には事実の確定に影響を及ぼす証拠調べ手続の違法があるため、原判決を破棄し、事件を更なる審理のために控訴審に差し戻すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法305条等が定める証拠調べ手続の履践は、事実認定の前提となる必須の要件である。実務上は、判決書に引用する証拠がすべて証拠等関係カードや公判調書において適法に採用・調査されているかを厳格に確認すべき指針となる。答案上は、伝聞法則や証拠調べの不備を論じる際の根本原則として援用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2239 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の公判調書等の記載に基づき、検証調書及び実況見分書について適法な証拠調べの手続きが履践されていると認められる場合には、その証拠能力を否定すべき違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人側は、本件の証拠となった検証調書及び実況見分書について、適法な証拠調べ手続が履践されていないとして、その…