判旨
犯罪後の法令により罰条が失効した場合には、刑事訴訟法第337条第2号(旧刑訴法第363条第2号)にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、被告人を免訴すべきである。
問題の所在(論点)
行為当時に有効であった罰則規定が、判決前に法令の改廃(失効)によって消滅した場合、いかなる裁判をすべきか。特に、命令の失効が刑法第6条および刑事訴訟法第337条第2号(旧刑訴法363条第2号)の「刑の廃止」にあたるかが問題となる。
規範
日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律に基づき、罰則を定める命令が失効した場合、それは実質的に「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。この場合、裁判所は有罪判決を下すことはできず、免訴の言渡しをしなければならない。
重要事実
被告人は、昭和22年8月22日頃、法定の資格がないにもかかわらず自宅でダイナマイト19本および緩燃導火線を所持していた。原判決は、明治44年勅令第16号(銃砲火薬類取締法施行規則)の罰則規定を適用して被告人を処断した。しかし、当該罰則規定(規則第45条)は、昭和23年1月1日をもって国法としての効力を失っていた。
あてはめ
本件で適用された銃砲火薬類取締法施行規則第45条は、日本国憲法施行に伴う命令の効力に関する法律第1条により、昭和23年1月1日以降はその効力を失っている。被告人の行為は昭和22年に行われたものであるが、判決時においては既に罰則が存在しない状態となっている。これは犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当するため、実体判決をなすことは許されない。
結論
原判決を破棄し、被告人を免訴とする。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)4 / 裁判年月日: 昭和27年12月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】法律の失効により処罰規定が効力を失った場合、刑法6条の「犯罪後の法律により刑の変更があったとき」に該当し、刑事訴訟法に基づき免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和21年8月頃から翌22年11月までの間、許可を受けずにダイナマイト等の爆発物を自宅付近に隠匿所持した。原審は、これ…
法令の改廃により罰則が廃止・失効した場合の形式裁判(免訴)の処理を示す典型例である。司法試験においては、事後的に憲法違反で無効となった罰則や、限時法の失効、本判決のような命令の失効が、刑訴法337条2号の免訴事由に該当するかを検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和24(れ)1128 / 裁判年月日: 昭和29年9月8日 / 結論: その他
銃砲火薬類取締法施行規則第四五条の規定は、昭和二二年法律第七二号「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第一条により昭和二三年一月一日以降は国法としての効力を失つたものである。
事件番号: 昭和25(れ)723 / 裁判年月日: 昭和27年12月24日 / 結論: その他
鉄砲火薬類取締法施行規則第四五条の規定は、昭和二二年法律第七二号「日本告憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第一条により昭和二三年一月一日以降は国法としての効力を失つたものである。
事件番号: 昭和26(れ)2350 / 裁判年月日: 昭和27年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧銃砲等所持禁止令が憲法に違反しないことは判例の確立したところであり、また昭和22年法律第72号1条の2の規定に照らし、同令が昭和22年12月31日をもって当然に失効することはない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲等の所持禁止に抵触する行為を行い、旧銃砲等所持禁止令(および銃砲刀剣類等所持取締令附…
事件番号: 昭和27(あ)2731 / 裁判年月日: 昭和29年7月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】平和条約の発効により失効したポツダム宣言受諾に伴う政令の違反行為については、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、被告人を免訴すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和25年政令第325号(占領目的阻害行為処罰令)に違反する行為、および銃砲刀剣類等所持…