地方公務員災害補償基金の従たる事務所の長がした補償に関する決定の取消の訴は、地方公務員災害補償基金審査会に対する再審査請求の裁決を経た上で提起しなければならない。
地方公務員災害補償基金の従たる事務所の長がした補償に関する決定の取消の訴と再審査請求の経由
地方公務員災害補償法51条,地方公務員災害補償法56条,行政事件訴訟法8条1項
判旨
地方公務員災害補償基金による補償決定の取消訴訟は、審査会への再審査請求を経ていなければ、審査請求前置主義の違反として不適法に却下されるべきである。
問題の所在(論点)
地方公務員災害補償基金の決定の取消訴訟を提起するにあたり、地方公務員災害補償基金審査会に対する再審査請求の裁決を経ることが必要か(審査請求前置主義の適用の有無)。
規範
行政事件訴訟法第8条1項ただし書に基づき、法律に審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消訴訟を提起できない旨の定めがある場合、当該前置手続を完了していない訴えは不適法とされる。地方公務員災害補償法第56条は、同法に基づく補償の決定等について、地方公務員災害補償基金審査会による再審査請求を経ることを訴訟提起の要件としていると解される。
重要事実
上告人は、地方公務員災害補償基金の従たる事務所の長が行った公務災害補償に関する決定に不服があり、取消訴訟を提起した。しかし、上告人は地方公務員災害補償法に規定されている地方公務員災害補償基金審査会への再審査請求の手続を完了させないまま、本件訴訟を提起した。原審は、この訴えを審査請求前置主義に違反するとして不適法と判断し、却下した。
あてはめ
地方公務員災害補償法における不服申立て手続は、専門的な判断を要する公務災害の適正な処理を期すために設けられたものである。本件において、上告人は同法に基づく再審査請求の裁決を経ずに本件訴訟を提起しており、これは行政事件訴訟法第8条1項ただし書の個別法に基づく前置要件を満たしていないといえる。したがって、法定の手続を欠いたまま提起された訴えは、訴訟要件を欠くものとして不適法であると解される。
結論
地方公務員災害補償基金の補償決定の取消訴訟は、再審査請求の裁決を経た上で提起しなければならず、これを経ていない本件訴訟は不適法として却下される。
実務上の射程
行政事件訴訟法における審査請求前置主義の具体例を示す。法律に個別の定めがある場合、前置手続の履践が訴訟要件となり、欠いている場合は却下判決(門前払い)を受けることを確認する実務上基本的な判例である。
事件番号: 昭和38(オ)563 / 裁判年月日: 昭和38年9月26日 / 結論: 棄却
選挙の立候補届を受理されなかつたからといつて、右不受理の取消を求める訴を提起することは、許されない。
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。