被告の単独所有名義を原告らと被告との共有名義に更正すべき旨の登記手続を命ずる判決主文においては、更正後の登記事項として、原告らの共有持分だけでなく、被告に帰属する共有持分をも明らかにすべきである。 (意見がある。)
更正登記手続を命ずる判決主文
不動産登記法56条,不動産登記法66条,民訴法191条1項,民訴法224条1項
判旨
共同相続人の一人が相続財産を自己の単独所有であるとして占有・登記している場合、相続回復請求権(民法884条)の適用の有無は、その占有者が自己に相続権があると合理的に信じるに足りる正当な理由があるか否かによって決まる。
問題の所在(論点)
共同相続人の一人が、他の共同相続人の相続持分権を侵害して単独所有名義の登記等を行っている場合に、民法884条の相続回復請求権の消滅時効が適用されるか。
規範
相続回復請求権(民法884条)の規定は、真正相続人の権利を侵害している表見相続人が、自己に相続権があるものと信じ、または信じるにつき合理的な事由がある場合にのみ適用される。共同相続人の一人が他の共同相続人の持分を否定して相続財産を占有・排他的登記をしている場合であっても、その占有者が自己にのみ相続権があると信じるにつき相当の理由がない(悪意・有過失)ときは、同条の短期消滅時効を援用することはできない。
重要事実
本件は、被相続人の遺産である土地および建物について、共同相続人の一人である上告人が、他の共同相続人である被上告人ら三名の持分を無視して、自己の単独名義で所有権移転登記(土地)および所有権保存登記(建物)を完了させた事案である。被上告人らは、自身の相続持分(各7分の1)に基づく共有持分権を主張し、上告人に対し更正登記手続を求めて提訴した。これに対し、上告人は相続回復請求権の消滅時効を援用して争った。
事件番号: 昭和53(オ)6 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 棄却
共同相続人の一人甲が、他の共同相続人乙丙の承諾を得ることなく乙丙名義で相続放棄申述をし、これに基づき相続財産に属する不動産につき甲単独名義の相続登記をして乙丙の相続権を侵害している場合においては、右侵害排除の趣旨で甲単独名義の登記を甲乙丙共有名義の登記に更正することを求める乙丙の請求について、民法八八四条は適用されない…
あてはめ
最高裁は、昭和53年12月20日大法廷判決の法理を本件にも適用した。本件において、上告人は他の共同相続人の存在を認識していたか、あるいは認識し得た状況にあったと推認される。上告人が単独所有であると信じるに足りる「正当な理由」がない限り、その侵害行為は単なる共有持分の侵害にすぎず、物権的請求権に基づく行使を妨げない。判決文からは上告人の主観に関する具体的な認定詳細は不明であるが、原審が民法884条の適用を否定した判断を「正当として是認」していることから、上告人に合理的な信憑理由がなかったものと判断された。
結論
共同相続人による持分侵害において、侵害者が自己の単独相続を信じるにつき正当な理由がない場合は、民法884条の適用はなく、被上告人らの持分権に基づく登記更正請求は認められる。本件上告は棄却された。
実務上の射程
答案上は「相続回復請求権の成否」が問われる場面で使用する。まず「相続欠格・廃除等のない共同相続人間でも884条の適用があり得るか」を論じ、次に「表見相続人の主観的要件(善意無過失)」を規範として立てる。事実認定において、他の相続人の存在を知り得たか、遺言の有無などの客観的事情から『正当な理由』を否定し、通常の物権的請求権(時効は20年または消滅しない)として処理する流れが一般的である。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。
事件番号: 平成6(オ)440 / 裁判年月日: 平成7年12月5日 / 結論: 棄却
相続財産である不動産について単独名義で相続の登記を経由した共同相続人の一人甲が、甲の本来の相続持分を超える部分が他の相続人に属することを知っていたか、又は右部分を含めて甲が単独相続をしたと信ずるにつき合理的な事由がないために、他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用することができない場合には、甲から右不動産…
事件番号: 昭和56(オ)73 / 裁判年月日: 昭和56年10月30日 / 結論: その他
甲が、不動産について、共同相続によつて持分しか取得しなかつたにもかかわらず、自己が単独相続したとして、その旨の所有権移転登記を経由したうえ、乙に右不動産を売り渡してその旨の登記をしたときは、甲は、乙及び乙からの転得者丙に対し、自己が取得した持分をこえる部分についての右所有権移転が無効であると主張して、その抹消(更正)登…