約束手形の満期が振出後に変造された場合には、右手形の所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効は、変造前の満期から進行する。
手形の満期が変造された場合と所持人の振出人に対する手形債権の消滅時効の起算点
手形法69条,手形法70条1項,手形法77条1項7号,手形法77条1項8号
判旨
手形を金融機関に取立委任裏書した事実は、それのみでは時効中断事由である裁判外の請求(催告)があったとは認められない。
問題の所在(論点)
手形の所持人が金融機関に対して取立委任裏書を行うことが、債務者に対する裁判外の請求(催告)に該当し、消滅時効を中断させるか。
規範
時効中断事由としての裁判外の請求(催告)が認められるためには、債権者が債務者に対して直接または代理人を通じて、履行を求める意思を表示したという事実が必要である。
重要事実
上告人は、被上告人に対する手形上の請求権を有していたが、本件手形につき満期の変造等があった。上告人は、当該手形を金融機関に対して取立委任裏書を行ったが、その事実をもって民法上の「催告」に該当し、時効が中断するか否かが争われた。
あてはめ
取立委任裏書は、所持人が金融機関に対して手形金の取立てを委任する内部的な法律関係、あるいは手形上の権利行使の準備行為にすぎない。債務者との関係においては、これによって直ちに債務者に対する履行の請求がなされたとは評価できず、特段の事情がない限り、裁判外の請求があったということはできない。
結論
手形を金融機関に取立委任裏書したとしても、裁判外の請求があったとはいえず、消滅時効は中断しない。
実務上の射程
手形法上の時効中断(手形法70条等)に関して、銀行実務における取立委任の法的性質を明確にしたものである。答案上は、単なる事務手続の開始が「催告」に当たらないことを示す際の具体例として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)683 / 裁判年月日: 昭和39年8月24日 / 結論: 棄却
手形金債務の消滅時効が承認により中断せられるためには、該手形の呈示を伴う手形金の請求がなければならないものではない。