手形の書替がなされた場合、その目的が支払延期のためであり、かつ旧手形はこれを新手形の見返り担保とする意味で回収されなかつた以上、旧手形に基く債務は、直接の当事者間においても、右書替により消滅することはない。
手形の書替により旧手形に基く債務は消滅するか
手形法1条,手形法17条
判旨
手形の書替が支払延期の目的で行われ、旧手形が新手形の見送り担保として回収されなかった場合には、旧手形はその効力を失わない。
問題の所在(論点)
手形が書き替えられた場合において、旧手形上の権利が消滅するか否か(手形更改の成否と旧手形の効力)。
規範
手形の書替(更改)があった場合、それが単なる支払猶予の目的であり、かつ旧手形を担保として保持する合意が認められるときは、特段の事情がない限り、旧手形上の権利は消滅せず存続する。
重要事実
上告人は、所持する本件手形につき、昭和25年11月17日に新手形への書替を行った。この書替の目的は本件手形の支払延期にあり、本件手形自体は新手形の見送り担保とする趣旨で回収されず、上告人の手元に留め置かれた。その後、旧手形に基づく権利行使が問題となった。
あてはめ
本件における手形の書替は、もっぱら支払期限を延期することを目的として行われたものである。また、書替の際に本件手形(旧手形)が回収されなかったのは、それを新手形に対する「見送り担保」として活用する意図があったためと認められる。このような主観的意図および客観的事実に基づけば、当事者間に旧手形を失効させる合意があったとは認められず、旧手形はその効力を維持していると評価される。
結論
本件手形は書替によってその効力を喪うものではなく、依然として有効である。
実務上の射程
手形の実務において、支払猶予のために書替が行われる際のデフォルトの意思解釈を示す。債権者が旧手形を返還していない事実は、権利消滅を否定する強力な証拠となる。答案上は、更改(民法513条等)の成否を論じる際の認定手法として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)860 / 裁判年月日: 昭和42年3月28日 / 結論: 棄却
一 約束手形が書替えられた場合において、旧手形に基づく債務が消滅しないときは、手形の所持人は、新旧いずれの手形によつても手形上の権利を行使することができる。 二 約束手形の書替をした者が、新旧いずれか一方の手形による手形金請求を受けた場合には、右手形振出人は、新旧両手形をともに返還すべきことを請求することができる。