支払延期のために、旧手形の回収なしに、新手形が振出された場合、所持人は新旧両手形上の権利を有する。
支払延期のため新手形の振出と旧手形上の権利。
手形法1条,手形法17条
判旨
支払期日の延期を目的として旧手形を回収せず新手形を振り出した場合(いわゆる延期手形)、特段の事情がない限り更改には当たらず、所持人は新旧両手形上の権利を併存的に有する。
問題の所在(論点)
手形の支払期日延期のために旧手形を回収せず新手形を振り出した場合(延期手形)、旧手形債務は更改によって消滅するか。また、所持人が有する権利の範囲はどう解すべきか。
規範
旧手形の支払期日を延期する趣旨で、旧手形を回収することなく新手形を振り出す「延期手形」の場合、特段の事情がない限り、旧債務を消滅させて新債務を成立させる更改(民法513条)には当たらない。この場合、新手形は旧手形債務の支払のために振り出されたものと解され、所持人は新旧両手形上の権利を併存して有するが、新手形の満期までは旧手形の支払猶予を認めたものとして、その行使が制限されるにとどまる。
重要事実
上告人は、旧手形の支払期日を延期する目的で、相手方から旧手形を回収することなく新手形を振り出した(いわゆる延期手形)。その後、上告人は、この手形の書換によって旧手形上の債務は消滅(更改)し、権利は新手形にのみ移転したものであると主張して、旧手形に基づく責任を争った。
あてはめ
本件において、新手形は旧手形の支払期日を延期する趣旨で振り出された「延期手形」であり、旧手形は回収されずに手元に留められている。このような場合、当事者の合理的意思は、旧債務を消滅させること(更改)ではなく、旧債務の支払のために新手形を交付し、支払時期の猶予を与える点にあると解される。したがって、新手形の満期が到来するまでは旧手形上の権利行使が制限されるものの、旧手形債務自体が当然に消滅するものではない。
結論
延期手形の振出は原則として更改には当たらず、旧手形債務は消滅しない。したがって、所持人は依然として旧手形上の権利を保持しており、支払猶予期間の経過後はこれを行使し得る。
実務上の射程
手形の書換が更改(債務消滅)か支払のための交付(権利併存)かを判断する際の基準を示す。実務上、旧手形が回収されていれば更改と認められやすいが、本判例のように「旧手形が回収されていない(手残り手形)」かつ「支払猶予の趣旨」であれば、権利併存と解すべきとする答案構成に用いる。
事件番号: 昭和38(オ)1475 / 裁判年月日: 昭和39年11月6日 / 結論: 棄却
書替え後のいわゆる手残手形(旧手形)の期限後裏書譲渡をうけた者は、その後新手形について弁済があつたことにより手形債権を喪失する。