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河岸に接した堆積土の上で遊んでいた満六歳の男児の転落水死事故につき、その原因は河川への転落事故を防止するための防護柵が設置されていたのにこれを乗り越える等して堆積土の上に降りたものであり、河川管理者の通常予測することのできない異常な行動によるものであつたとして、河川管理の瑕疵が否定された事例
国家賠償法2条
判旨
河川の管理に瑕疵があったといえるためには、当該営造物の存在自体に危険性があるか、あるいは管理者が通常予測可能な範囲内の行動によって事故が発生したといえることを要する。
問題の所在(論点)
河川に堆積土が存在していた状況において、利用者の行動により事故が発生した場合、国家賠償法2条1項の「管理の瑕疵」が認められるか。
規範
国家賠償法2条1項の「営造物の設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいう。具体的には、当該営造物の構造や周辺状況等に照らして存在自体に危険性がある場合、または利用者の通常予測し得る行動に起因して事故が発生する危険がある場合に認められる。したがって、管理者が通常予測することのできない利用者の異常な行動によって発生した事故については、管理の瑕疵を認めることはできない。
重要事実
京都府が管理する河川において、堆積土が存在していた。上告人らの子Dが当該河川で行動中、事故が発生した。上告人らは、堆積土の存在を放置した管理に瑕疵があるとして国家賠償請求を提起した。
あてはめ
まず、本件堆積土の存在自体には特段の危険性は認められない。次に、本件事故は、河川管理者である京都府知事において「通常予測することのできない」利用者(D)の「異常な行動」によって発生したものである。このように、営造物自体の危険性がなく、かつ管理者の予測可能性を超えた異常な行動が事故の直接の原因である以上、当該河川が通常有すべき安全性を欠いていたとは評価できない。
結論
本件河川の管理に瑕疵があったということはできず、国家賠償責任は認められない。
実務上の射程
営造物責任における「通常有すべき安全性」の判断において、利用者の行動が「予測可能(通常)」か「予測不能(異常)」かが重要な画定要素となることを示した事例。特に自然公物である河川等の管理瑕疵を論じる際、管理者の予測可能性の限界を主張する事案で有用である。
事件番号: 昭和58(オ)1440 / 裁判年月日: 昭和60年3月12日 / 結論: 棄却
四歳九月の男児が貯水槽に転落して溺死する事故が発生した場合において、貯水槽が住宅団地内にあり、その防護網の上部にいわゆる忍び返しが設置されていなかつたとしても、右防護網が一・三メートルの高さで貯水槽の周囲に完全に張りめぐらされているのに、同児が防護網によじ登つて転落したものであるなど原判示の事情があるときは、同児の行動…