原判決確定の事実関係(原判決理由参照)によれば、小学校敷地内にある本件プールの周囲に設置された金網フェンスが幼児でも容易に乗り越えられる構造であつて、他方、幼児がこれを乗り越えて本件プール内に立ち入つたことがプールの設置管理者の予測を超えた行動であつたとすることもできないから、結局、本件プールの設置管理に瑕疵があつたというべきである。 (反対意見がある。)
学校プールの設置管理に瑕疵があるとされた事例
国家賠償法2条1項
判旨
小学校敷地に隣接する児童公園で遊ぶ幼児が、金網フェンスを乗り越えてプールに立ち入り事故が発生した場合において、当該フェンスが幼児にとって容易に乗り越えられる構造であり、かつプールが幼児を惹きつける誘惑的存在であるときは、設置管理者が幼児の行動を予測し得たものとして、営造物の設置管理の瑕疵が認められる。
問題の所在(論点)
幼児が立ち入ることが想定されない状況において、容易に乗り越えられる金網フェンスしか設置していなかったことが、国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」に該当するか。特に、幼児の予測し難い行動をどこまで考慮すべきかが問題となる。
規範
国家賠償法2条1項にいう「設置又は管理に瑕疵」があるとは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいう。その判断にあたっては、営造物の構造、用途、場所的環境、利用状況等の諸般の事情を総合的に考慮し、当該営造物から通常予想される危険の発生を防止するに足りる設備を備えているか否かによって決すべきである。
重要事実
小学校敷地内のプールの南側に、児童公園が隣接していた。両者の間には金網フェンスが設置されていたが、これは幼児であっても容易に乗り越えることができる構造であった。当時3歳7か月の幼児が、児童公園で遊んでいた際、このフェンスを乗り越えてプールに立ち入り事故に遭った。プールの設置管理者である地方公共団体(上告人)に対し、遺族らが国家賠償を求めて提訴した。
あてはめ
まず、場所的環境として、本件プールは幼児が集まる児童公園に隣接しており、幼児にとってプールは好奇心をそそる「一個の誘惑的存在」であった。次に、本件の金網フェンスは、幼児であっても容易に乗り越え可能な構造であった。これらの事実を併せれば、3歳7か月の幼児がフェンスを乗り越えてプールに立ち入ることは、設置管理者にとって予測不可能な行動とはいえない。したがって、本件プールは、隣接する公園を利用する幼児の安全を確保するために通常有すべき安全性を欠いていたと評価できる。
結論
本件プールには営造物としての設置・管理の瑕疵が認められる。よって、上告人の損害賠償責任を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
営造物の利用対象者だけでなく、周辺環境から予測される第三者(特に判断能力の不十分な幼児)の行動を含めて安全性の有無を判断する際の基準となる。答案では、被害者の属性、営造物の場所的環境、設備による立ち入り防止の困難性といった具体的事実から「予測可能性」を基礎づける際に、本判例を引用して瑕疵を認定する指針とすべきである。
事件番号: 昭和61(オ)315 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: 破棄自判
幼児が、テニスの審判台に昇り、その後部から座席部分の背当てを構成している左右の鉄パイプを両手で握つて降りようとしたために転倒した審判台の下敷きになつて死亡した場合において、当該審判台には、本来の用法に従つて使用する限り、転倒の危険がなく、右幼児の行動が当該審判台の設置管理者の通常予測し得ない異常なものであつたなど判示の…