営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく、右行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるときは、右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものであるということはできない。
営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた事故と営造物の設置管理の瑕疵
国家賠償法2条1項
判旨
国家賠償法2条1項の「瑕疵」は、営造物が本来備えるべき安全性を欠いているかを、構造や利用状況等を総合考慮して判断する。通常の用法に即しない行動によって生じた事故について、管理者は原則として責任を負わない。
問題の所在(論点)
国家賠償法2条1項の「瑕疵」の判断基準、および本来の用法に反する利用形態によって生じた事故に対する管理者の責任の有無。
規範
国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の「瑕疵」とは、当該営造物が「通常有すべき安全性」を欠いている状態をいう。その判断にあたっては、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等、諸般の事情を総合考慮して具体的・個別的に判断すべきである。
重要事実
6歳の幼児が、道路端に設置された高さ80cm(手摺までの高さ65cm)の防護柵に後ろ向きに腰かけて遊んでいたところ、誤って約4メートル下の校庭に転落し負傷した。当該防護柵は、通行人や車両の転落防止を目的として設置されており、材質や高さは同種の柵として標準的なものであった。付近は住宅地で子供の遊び場となっていたが、防護柵の設置後に同様の転落事故や住民からの改善要望はなかった。
あてはめ
本件防護柵は通行人等の転落防止を目的とするもので、構造上、通行時の安全性に欠ける点はない。また、幼児が防護柵に腰かけるという行動は、防護柵本来の用法に即しないものであり、設置管理者において通常予測すべき行動とはいえない。幼児が危険判断能力に乏しいことを考慮しても、本来の目的を超えた異常な利用状況下での事故まで管理者の責任範囲に含めることはできない。
結論
本件道路の設置又は管理に瑕疵はない。したがって、被上告人は設置管理者としての責任を負わない。
実務上の射程
営造物責任の「安全性」が、本来の用法を基準とした相対的な概念であることを示す。答案では、被害者の行動が「通常予測可能な範囲内」か「異常な利用」かを区別する際の考慮要素(構造・環境・利用状況)として本枠組みを引用する。
事件番号: 昭和55(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和56年7月16日 / 結論: 棄却
原判決確定の事実関係(原判決理由参照)によれば、小学校敷地内にある本件プールの周囲に設置された金網フェンスが幼児でも容易に乗り越えられる構造であつて、他方、幼児がこれを乗り越えて本件プール内に立ち入つたことがプールの設置管理者の予測を超えた行動であつたとすることもできないから、結局、本件プールの設置管理に瑕疵があつたと…