土地賃借人と砂利採取者との間の砂利採取契約において、採取者が賃借人に差し入れた保証金につき、採取者が契約に違反したときはその返還請求権が消滅する旨の約定があるなど原判示の事実関係のもとにおいては、保証金は、契約終了後採取者の土地明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金その他採取者の賃借人に対する一切の債務を担保するものであり、保証金返還請求権は、契約終了後土地明渡完了の時において、それまでに生じた右被担保債権を控除し、なお残額があるときに、その残額につき発生するものと解すべきである。
砂利採取契約に基づき砂利採取者が差し入れた保証金が、採取者の契約上の一切の債務の担保であり、その返還請求権は契約終了後土地明渡完了の時に被担保債権を控除した残額について発生するとされた事例
民法619条2項
判旨
不動産の利用契約に伴い交付された保証金の返還請求権は、特段の事情がない限り、契約が終了し、かつ目的物を明け渡した時点で、それまでに生じた一切の被担保債権を控除した残額について発生する。
問題の所在(論点)
不動産の利用に伴い交付される保証金の返還請求権の発生時期、およびその発生要件は何か。特に、目的物の明渡しが返還請求権の発生要件となるか。(民法601条以下、現民法622条の2参照)
規範
賃貸借等の契約に伴い交付される保証金は、契約期間中の債務のみならず、契約終了後から目的物明渡しまでに生じる賃料相当損害金その他契約に基づき生じる一切の債権を担保する。したがって、その返還請求権は、①契約の終了および②目的物の明渡しが完了した時点において、被担保債権を控除した残額がある場合に、その残額につき発生する。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、砂利採取契約(本件契約)を締結した際に保証金を交付した。その後、本件契約が終了したとして保証金の返還を求めたが、上告人は本件土地を現実に明け渡した事実、および明け渡し時において被担保債権を控除しても残額が存在することを主張・立証していなかった。
あてはめ
本件保証金は、砂利採取料債権のみならず、契約終了後の明渡しまでの賃料相当損害金等、契約から生じる一切の債権を担保する性質を有する。このような担保的性質に鑑みれば、明渡しが完了するまでは被担保債権の総額が確定しない。本件において、上告人は契約終了を主張するものの、返還請求権の発生要件である「土地の明渡し」および「控除後の残額の存在」を主張立証していないため、発生要件を欠くといえる。
結論
保証金返還請求権は、目的物の明渡し完了時までは発生しない。したがって、明渡しを証明していない上告人の請求は認められない。
実務上の射程
敷金返還請求権に関する従来の判例(最大判昭44・11・25)の法理を、砂利採取契約に伴う保証金にも及ぼしたものである。答案上は、賃貸借終了に基づく敷金(保証金)返還請求の要件を論じる際、目的物の明渡しが先履行(発生要件)であることを示す根拠として活用する。民法改正(622条の2第1項1号)により明文化されたが、その解釈の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和28(オ)1290 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約に際して買主から売主に交付された保証金は、特段の事情のない限り、当該売買契約の存続期間中に限り寄託された消費寄託としての性質を有し、代金債務の履行を確保する趣旨を含むものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)との間で反古紙の売買契約が締結された。その際…