当事者に解約権が留保されていたとの事実を確定することなく、期間の定めのある賃貸借について期間内にされた解約申入によつて、賃貸借は終了したものであるとする判断は、違法である。
期間の定めのある賃貸借と解約申入
民法618条
判旨
期間の定めのある賃貸借契約において、解約権留保の特約がない限り、賃借人が期間内に一方的にした解約申入れは無効であり、契約は終了しない。
問題の所在(論点)
期間の定めのある賃貸借契約において、解約権留保の特約がない場合に、賃借人からの期間途中の一方的な解約申入れによって賃貸借契約が終了するか(民法617条1項・618条の解釈)。
規範
賃貸借における期間の定めは、解約権留保の特約がある場合はその留保をした当事者の利益のために、そうでない場合は賃貸人・賃借人双方の利益のためになされたものと解される。したがって、期間の定めのある賃貸借において、解約権を留保していない当事者が期間内に一方的にした解約申入れは無効であり、賃貸借はそれによって終了することはない。
重要事実
賃借人(被上告人)は、賃貸人(上告人)から土地を期間1年(昭和44年10月1日から)の約定で賃借していた。賃借人は期間途中の昭和45年3月31日、同年4月末日限りで土地を明け渡す旨を通知し、実際に明け渡した。これに基づき、賃借人は契約が終了したとして保証金の返還を請求した。なお、契約に解約権留保の特約があったか否かは、原審において確定されていない。
あてはめ
本件土地賃貸借には1年の期間の定めがあり、この期間は特約がない限り双方の利益のために存する。被上告人(賃借人)は期間中に解約を申し入れているが、被上告人に解約権の留保がなされていた事実は確定されていない。そうである以上、解約権を留保していない賃借人による一方的な解約申入れは無効であるから、この申入れのみをもって賃貸借契約が終了したと判断することはできない。
結論
解約権留保の特約があるなどの事情がない限り、賃借人の一方的な解約申入れによって契約が終了したとは認められない。
実務上の射程
期間の定めのある賃貸借における『期間の定めの利益』が双方にあることを明示した基本判例である。司法試験の答案上は、賃料債権の存否や保証金返還請求の可否が問われる場面で、一方的な解約の有効性を否定する根拠として使用する。解約権留保の特約(民法618条)の有無が認定のポイントとなる。
事件番号: 昭和54(オ)90 / 裁判年月日: 昭和55年7月4日 / 結論: 棄却
土地賃借人と砂利採取者との間の砂利採取契約において、採取者が賃借人に差し入れた保証金につき、採取者が契約に違反したときはその返還請求権が消滅する旨の約定があるなど原判示の事実関係のもとにおいては、保証金は、契約終了後採取者の土地明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金その他採取者の賃借人に対する一切の債務を担保するもので…
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自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が右建物の所有権を第三者に移転した場合に、新旧所有者間において賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨を合意したとしても、これをもって直ちに賃貸人の地位の新所有者への移転を妨げるべき特段の事情があるものということはできない。 (反対意見がある。)