生命保険契約に附加された特約に基づいて被保険者である受傷者に給付される傷害保険金又は入院保険金については、商法六六二条所定の保険者の代位の制度の適用がなく、右受傷者が保険者から支払を受けた場合であつても、その限度で第三者に対する損害賠償請求権を失うものではない。
生命保険契約に附加された特約による給付金と商法六六二条の適用の有無
商法662条
判旨
生命保険契約の特約に基づき支払われる傷害・入院給付金は、払込保険料の対価としての性質を有し、不法行為等の損害賠償額から損益相殺として控除されない。また、これらの給付金には保険者代位の制度の適用もないため、被保険者は受領後も損害賠償請求権を失わない。
問題の所在(論点)
生命保険契約の特約に基づいて支払われる傷害給付金や入院給付金が、不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺の対象となるか。また、保険者代位の適用により、被保険者の加害者に対する損害賠償請求権が消滅するか。
規範
生命保険契約の特約に基づく傷害給付金または入院給付金は、既に払い込んだ保険料の対価としての性質を有する。したがって、第三者の不法行為等による損害賠償額の算定に際し、損益相殺として控除すべき利益には当たらない。また、傷害保険契約や生命保険契約においては、特段の合意がない限り保険者代位(商法旧662条、現保険法25条・59条参照)の規定は適用されず、被保険者が給付を受けたことによって損害賠償請求権を当然に失うことはない。
重要事実
被害者(被上告人)は、加害者(上告人)による不法行為に基づき負傷した。被害者は、自身が加入していたD生命保険、E生命保険、および簡易生命保険の各生命保険契約に付加された特約に基づき、合計76万円の傷害給付金および入院給付金を受領した。加害者は、損害賠償額の算定に際し、被害者が受領したこれらの給付金を損益相殺として控除すべきであると主張して争った。
あてはめ
本件における各給付金(傷害給付金10万円、入院給付金54万円、傷害給付金12万円)は、いずれも生命保険契約に付加された特約に基づくものである。これらの給付は被害者が対価としての保険料を支払ってきたことによる利益であり、加害者の義務を免れさせる性質のものではないため、損益相殺の対象とならない。また、人身保険の領域においては、定額給付的な性格も有することから保険者代位の適用が否定される。したがって、被害者がこれらの給付を受領したからといって、その限度で加害者に対する損害賠償請求権を失うという論理は成立しない。
結論
傷害給付金および入院給付金は、損害賠償額から控除すべきではない。被上告人は給付受領後も上告人に対して全額の損害賠償を請求できる。
実務上の射程
人身損害における損益相殺の範囲を画する重要判例である。社会保険(労災保険等)や損害保険(車両保険等)と異なり、生命保険等の定額保険的性質を持つ給付については損益相殺を否定するのが確立した実務である。答案上は、利得吐き出しの不当性を説く文脈で「保険料の対価性」をキーワードに論証する。
事件番号: 昭和47(オ)645 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: その他
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