生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきでない。
不法行為による死亡に基づく損害賠償額から生命保険金を控除することの適否。
民法709条,商法673条
判旨
不法行為により被保険者が死亡した場合に、その相続人が受領した生命保険金は、不法行為による損害賠償額から控除(損益相殺)することはできない。
問題の所在(論点)
不法行為により死亡した者の相続人が受け取った生命保険金を、加害者が賠償すべき損害額から控除(損益相殺)できるか。
規範
生命保険契約に基づいて給付される保険金は、既に払い込まれた保険料の対価としての性質を有し、不法行為の原因と関係なく支払われるべきものである。したがって、不法行為によって給付が発生したとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除することはできない。
重要事実
不法行為により被保険者Dが死亡した。これに伴い、Dの相続人である被上告人両名に対し、Dが締結していた生命保険契約に基づく生命保険金が支払われた。不法行為の加害者(上告人)側は、損害賠償額の算定にあたり、当該保険金額を控除すべきであると主張した。
あてはめ
生命保険金は、被保険者が生前に支払った保険料という対価の反映であり、事故の発生を条件としてあらかじめ約定された金額が支払われるものである。これは被害者側の資産形成の結果であり、加害者の行為と相当因果関係のある利益とはいえない。本件においても、被上告人らが受領した保険金は保険料の対価としての性質を持つため、不法行為による損害を補填するものとして控除の対象に含めるべきではない。
結論
生命保険金は損害賠償額から控除されない。したがって、控除を認めなかった原審の判断は正当である。
実務上の射程
損益相殺の可否が問われる場面で、保険金の種類ごとに射程を整理する際に用いる。生命保険や一定の傷害保険(定額給付型)には本判例の射程が及ぶが、損害の実損を埋める性質を持つ損害保険金(実損払型)には及ばない点に注意する。
事件番号: 昭和38(オ)987 / 裁判年月日: 昭和41年4月7日 / 結論: 棄却
不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失の損害賠償債権を相続した者が、当該被害者の死亡により、扶助料の受給権を取得した場合には、当該相続人が請求することができる損害賠償額は、扶助料額の限度において減縮すべきものと解するのが相当である。